2025/06/17

Taiwan Today

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魅力あふれる屏東県の勝利星村創意生活園区、眷村を区画ごと保存

2020/02/07
「勝利星村創意生活園区」はかつての眷村を1区画まるごとほぼ完全に保存しており、台湾独特の歴史を垣間見ることが出来る。写真は園区内の建物と風景。左上は「将軍之屋」、右上は「孫立人行館」。(中央社)
「勝利星村創意生活園区」(V.I.P Zone)は1つの区画が非常に良い状態で保存されている眷村で、台湾全土を見渡しても珍しいケースである。眷村は、1949年以降、当時の国民政府と共に中国大陸から台湾に渡ってきた人たちが暮らした集落のこと。2016年11月に文化部(日本の省レベル)がかつての街並みを取り戻すとする「再造歴史現場計画」を打ち出したのを受けて、屏東県(台湾南部)は飛行場を背景とした「屏東飛行故事(勝利・崇仁眷村)再造歴史場域計画」を提案し、2018年2月に文化部から4億8,558万台湾元(約17億5,360万日本円)の予算を獲得するのに成功した。
 
日本占領時代の1927年、日本の陸軍飛行第八連隊が屏東県に駐屯、1930年には第三飛行団に編成が拡大された。軍部の人々が暮らすため屏東飛行場(現在の屏東空軍空港)近くには大量の官舎が建てられた。第2次世界大戦終了後、中華民国軍がこれを接収してさらに広げたことで、屏東市は濃厚な眷村文化のムードに包まれるようになったのである。
 
「勝利星村創意生活園区」で保存されている官舎は合計69棟。1棟で2戸(2世帯)のものもあれば一戸建ての独立した住宅もある。屏東県文化処の調査によれば、エリア内ではかつて100世帯近くが暮らした。これらの住宅は日本占領時代から戦後初期にかけて建設されている。屏東県は軍部よりこの眷村園区を受け継ぐと、2007年に歴史建築として登録。2018年には「勝利星村創意生活園区」と命名した。同文化処によると、「星」と名付けたのには軍で階級を表す「星」の数が多い将軍たちが暮らしていた場所と言う意味がある。エリアは勝利眷村と崇仁眷村で形成されている。
 
官舎が修復されると、エリア全域でかつて将軍たちが多く暮らしていた姿が徐々に甦った。大きな庭には草木が茂っているほか老木もある。ここを訪れた日本人はみな、日本でもこうした建物がこれほど集まっている場所を見つけるのは難しいと驚くという。昨年は新たに19戸が修復を終えている。
 
「勝利星村創意生活園区」の面積は10ヘクタールあまり。歴史建築は69棟で、官舎としては100戸近く。屏東県文化処の調査によれば、かつて将軍が住んだ官舎は60戸あまりあり、ここは台湾で「星」の数が最も多い眷村だった。文化処では青島街と中山路の交差点に位置する、将軍の住んだ家を「将軍之屋」(将軍の家)と命名。この建物では鳳山陸軍官校(士官学校)の歴代校長が生活した。現在は公益書店の「大冊書店」が入居している。「勝利星村」に来たならばまず「将軍之屋」を訪れるとよい。ここでは「将軍之屋与眷村的前世今生」(将軍の家と眷村の今昔)が紹介されており、大勢の軍人たちが勝利眷村で暮らしたことが屏東市の生活圏をいかに変化させたかが理解できるという。
 
屏東県出身の作家、郭漢辰さんは著名なエッセイスト張暁風女史の旧居で独立系の書店を開いている。張暁風女史の部屋も復元し、訪れた人が当時の創作環境を参観できるようにしている。郭漢辰さんによると、「勝利星村」は台湾南部で官舎の保存状態が最もよい眷村。台湾に多い「竹籬笆」(竹垣)の眷村とは異なり、階級が「上校」(上佐)以上でなければ入居できなかった。眷村の中でも「豪邸」だったと言える。官舎はほぼ100坪あまりといずれも広く、大きな老木のほか、母屋に加えて離れまであった。これは将軍の副官(庶務将官)や運転手のための部屋だった。
 
郭さんが訪れた人を案内するルートは「将軍路線」。抗日戦争などでの活躍で知られる孫立人将軍の別邸だった建物の「孫立人将軍行館」から康定街へと歩き、程龍光将軍の官舎でオリーブの木を参観する。また、永勝巷には劉放吾将軍の官舎がある。劉放吾将軍は孫立人将軍の部下で、戦争で数々の輝かしい功績をあげた。後年には眷村で石炭の商売に始め、「煤炭伯伯」(石炭おじさん)と呼ばれたという。
 
現在の「勝利星村」には独立系の書店が5つあるほか、生態系保護の普及に努める店ではしばしば動物をテーマとしたバザーを開いている。ビジュアルアートの芸術家やミュージシャン、チャイナドレスを手作りする店や日本の着物のレンタルショップもあり、行楽客は眷村を背景にチャイナドレスや日本の着物姿で記念写真を撮り、往時を偲ぶことが出来る。
 
屏東県の潘孟安県長(県知事)は昨年末、康定街2号から12号までを台湾初の「原住民百貨公司」(先住民族デパート)にすると発表、屏東県で先住民族が多く暮らす村落で生産される著名なコーヒーやレッドキヌア(和名:タカサゴムラサキアカザ)、「瑠璃珠」(ガラス玉の工芸品)、アイデアプロダクトを展示販売するほか、音楽を聴かせるレストラン、パン工房、工芸家具エリアなどを設ける計画だという。
 
「勝利星村創意生活園区」には在来線・台湾鉄道の屏東駅から公共レンタサイクルのPbikeを借りるか徒歩、またはバスで行くことが出来る。それほど遠くはなく、「孫立人将軍行館」が最初に訪れる建物になる。
 
 

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