2025/05/18

Taiwan Today

観光

金門の雑貨店、実は地下坑道の存在を隠すためのダミー

2021/09/17
写真左上と右下は「後岐商店」と名付けられたダミー雑貨店。全長407メートルに達する坑道の入り口が隠されている。右上は坑道のもう一方の入り口が隠されている廟宇。廟宇とはいうものの、中にあるのは弥勒仏像だけだ。左下は坑道の入り口。腰をかがめなければ中に入ることができない。また、至るところに水が溜まっており、現在は封鎖されている。(中央社)
離島である金門県金寧郷安岐村の瓊安路に「後岐商店」と名付けられた雑貨店がポツンと建っている。雑貨店なのに、店内には商品が並んでいない。窓のように見えるものも、実は窓ではない。なぜならこれは、国共内戦の最前線として金門に軍政が敷かれていた頃に作られたダミーだからだ。実はここには、民間防衛のために掘られた坑道の入り口が隠されている。地元住民たちはいま、この坑道を一般開放することで地域経済の活性化を図りたいと考えている。
 
金門ではかつて民間防衛を強化するため、既存のトーチカや防空壕をベースに地下坑道を掘り、「地下に戦力を温存し、地上で火力を発揮する」ことを目指していた。敵の目を欺くため、ダミーの雑貨店や廟宇、墓場などを作り、これらを地下坑道への入り口とした。1979年に建てられた「後岐商店」も、安岐村の住民を守るために掘られた坑道の入り口の一つであった。
 
戦争の危機が去りゆくに連れ、こうしたダミーの建築物も放置されるようになった。長い間、メンテナンスを受けることなく放置されたため、草がぼうぼうに生え、捨てられたゴミがたまるなどして忘れられた存在となっていた。2016年、地元の村民やコミュニティプランナーなどがアイデアを絞り、このダミー雑貨店の屋根瓦を新しくし、壁のペンキを塗り替えた。整地を行い、入口前を覆っていた土や周辺の植栽を撤去するなどして、イメージを大きく変えた。「後岐商店」の看板を掛けたところ、見た目にも雑貨店らしくなった。ちなみに、「後岐」とは「安岐」の旧地名である。
 
まだ一般公開されていないが、「安岐民防坑道」と呼ばれるこの坑道は全長407メートルに達する。「後岐商店」からスタートして山灶方面へ延び、「周氏家廟」の裏手を通ってさらに頂林路を越えて古寧頭方向へと進む。ゴールは安岐84-1号という住所が振り当てられている廟宇だ。バス停のそばの雑草に埋もれており、廟宇とは言うもののも実は弥勒仏像が一つ置いてあるだけの祠(ほこら)だ。仏像の下に坑道につながる入口があるが、腰をかがめなければ坑道に入ることはできない。
 
坑道を一般開放して、観光名所とすべきだとの考えがあることについて安岐社区発展協会の呉神佑理事長は、「金門にはすでに多数の坑道がある。『安岐民防坑道』を売り出すためには、他の坑道とは違う点や特色を打ち出す必要がある。さもなくば政府の支持は得られないだろう」とその問題点を指摘している。このほか、安岐坑道の至るところに水が溜まっており、一般開放するためにはまず積水の問題を解決しなければならないとも述べている。
 
地元で民宿を経営する周以発さんは、古寧頭戦役(1949年10月に金門島で発生した中国共産党軍との戦い)で最も熾烈な戦いが繰り広げられていた場所が安岐から林厝に至るまでの一帯だと指摘した上で、もし「安岐民防坑道」を観光地として売り出すとしたら、この戦役の起点となる湖南高地から古寧頭戦史館までを結びつけた観光ルートを作って、この坑道に歴史的意義を与えるべきではないかと述べている。
 

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