林務局は森林法と野生動物保護法に基づき、台湾本島の森林の85%を占める国有林の管理を行っている。「保育類」に指定されている動物を法律に基づき厳格に保護し、さらに「自然保留区」、「野生動物保護区」、「自然保護区」などさまざまな形態の自然保護エリアを設けている。またこれらを連結させ「中央山脈保育廊道(Central Mountain Range Conservation Corridor、中央山脈保護回廊)」を形成し、自然環境保護の取り組みをさらに整備、台湾の野生動物の保護をより強化している。
林務局によると、森林の生態系の調査や観測は当初、人の手に頼るしかなく、野生動物の足跡を発見しても、カメラの準備が間に合わないということも多かった。
1990年代に入り、林務局は自動撮影の赤外線カメラを自然保護区域に設置し、全島の国有林や保護区域で野生動物の調査や映像記録の収集に利用した。ただ、従来のフィルム式のカメラは、枚数に限りがある上、設置した周辺の自然環境の変動の影響を受けやすく、フィルムは短時間で消耗してしまい、より完全な形で長期的に動物の姿をとらえるのは難しかった。
その後、1度設置すると4,000枚の撮影が可能な、新型のデジタル式赤外線カメラが登場し、映像を使った野外での長時間にわたる動態調査や、記録の収集、動物の行動観察により相応しい利器として活躍している。このカメラはセンサーによって1回10秒の映像を計4時間撮影することもできる。まず2009年に利嘉(台東県卑南郷)での調査に使われ、2010年から林務局の林区管理処で全面的に採用。2011年には「深山巡護特遣隊」の任務遂行時に、このカメラをさらに山の深いところに持ち込み、これまでより多く、より完全な動物の姿をとらえることに成功している。現在は台東林区管理処だけでも30数台を動物が出没するルートに設置している。

中でも、海抜850メートルの鹿野山区(台東県鹿野郷)に設置した赤外線カメラは、今年1月の半月間だけで台湾クロクマなど貴重な保護動物の生きた姿を撮影した。同区で記録された映像に登場する動物は、台湾クロクマのほかサンバー、台湾カモシカ、キョン、台湾ザル、キエリテン、サンケイ(山鶏)、イノシシの8種類。カメラの前に現れたがっしりした体格の体重100キログラム以上とみられる黒い影には、胸に台湾クロクマ特有の白く大きなV字の模様を確認することができる。専門家によると、大人のオスのクロクマだという。台湾クロクマの保護と調査を進めるため、林務局は27日にも台北市立動物園のパンダ館会議室で海外からクロクマの専門家を招きワークショップを行った。