北回帰線(北緯23.5度)とは、太陽が地表を直角に照らす範囲のうち、北半球で最も赤道から離れた緯線である。例年6月22日前後(今年は6月21日)に、太陽が北回帰線上を直角に照らし、北半球では一年で昼間が最も長くなる日となるため、この日を「夏至」と呼んでいる。北回帰線が通るところは、多くが砂漠や半砂漠の乾いた環境にある。ところが、台湾は北回帰線上にある世界最大の島であり、海洋性気候により豊かな生態環境が育まれている。
北回帰線の付近にある台湾の観光スポットを東から西に見てみよう。まず東部海岸、花東縦谷、玉山、阿里山、西拉雅国家風景区、雲嘉南浜海国家風景区、そして澎湖と連なっている。夏至当日は、朝から台11号線の69キロメートル地点にある東部海岸の北回帰線通過点で日の出を眺めたあと、秀姑巒渓(花蓮県)でスリル満点で楽しいラフティングをしたり、東海岸でホエールウォッチングなど水上のイベントを楽しむことができる。または、花蓮県瑞穂郷で温泉につかり、サイクリングをしながら花東縦谷の美しい風景を楽しむのもよい。
北回帰線が通る線上には、台湾最高峰の玉山や名峰の阿里山もある。夏至ごろの玉山は気温もちょうど心地よく、玉山登山で玉山国家公園の塔塔加歩道(南投県)を歩くのもよいであろう。阿里山(嘉義県)では、阿里山公路54キロメートル地点の「隙頂」から立ちこめる霧と日の出を望んだり、阿里山特産の高山茶を味わうこともできる。また、阿里山森林鉄道が走る「奮起湖」と呼ばれる山間の町も一見の価値があり、疲れたら昔懐かしい鉄道弁当を食べて一休みするのもよい。
西拉雅国家風景区に位置する烏山頭ダム(台南市)は、日本統治時代の日本人技師、八田與一氏が建設に尽力した。1930年代に建設されたこのダムは、アジアで唯一、セミハイドロリックフィル工法を採用、世界屈指の規模を誇り、現在でも重要な役割を果している。さらに、関子嶺で現地特有の泥温泉につかるのも健康的である。あるいはサイクリングをしながら、沿路の嘉義県の朴子渓で、川辺の風景を楽しむこともできる。また、近くの東石漁人埠頭では新鮮なカキを味わうことができる。
さらには昨年、世界的な非政府組織(NGO)から「世界で最も美しい海岸」に選ばれた離島の澎湖島も北回帰線上にある。豊かな海洋生態系を誇り、サーフィンやサンゴ礁を楽しむシュノーケリング、カヤックなど、自然と一体になれる海上アクティビティが数多く、夏の海で過ごすのが好きな人は外せないスポットである。
北回帰線を通る国土を持つ国は世界で16カ国だけである。交通部観光局はこれを活かし、北回帰線と夏至をコンセプトに、「台湾夏至235」と題する一連のキャンペーンを開催、上記の観光スポットが楽しめるたくさんのコースを企画している。また、夏の暑さをいやすメニューについて、グルメ投票を開催。マンゴーかき氷、愛玉ゼリー、仙草、サボテンアイス、スイカ、瑞穂牛乳、ジンジャートマト、冷麺、酸梅湯、スターフルーツジュースといった10種のメニューが選ばれた。それぞれユニークで、口に入れると暑さも吹っ飛ぶ美味しさである。このイベントの詳しい情報は、特設ウェブサイト(中国語)で紹介している。