台中市梧棲区の養豚場で死んだブタの検体を調べたところ、家畜伝染病であるアフリカ豚熱(ASF)の陽性反応が出た。報告を受けた台中市動物保護防疫処及び農業部動植物防疫検疫署は直ちに当該養豚場へ職員を派遣し、半径3キロメートルの範囲で立ち入り制限を実施すると同時に、195頭のブタを予防的殺処分した。
農業部動植物防疫検疫署は22日、台湾の家畜伝染病の専門家や関係機関を招集して防疫対応を協議し、以下の共通認識を得た。
(1)農業部が22日付けで台中に対策本部を設置し、農業部の杜文珍常務次長(事務次官)が現地に駐在する。
(2)22日正午より台湾全域でブタの輸送及び食肉処理を禁止する(5日間の実施とするが、今後の状況次第では延長の可能性もある)。
(3)22日より台湾全域で家畜用飼料として回収する生ごみ(台湾華語では「廚餘」)を利用した養豚を全面禁止する。
(4)台湾全域の食肉市場で場内および運搬車両の清掃・消毒を徹底する。
(5)輸送や食肉処理の禁止前にすでに市場や処理場に出荷されたブタについては、生きたブタの搬入のみ可能(搬出は禁止)とし、食肉処理前後の検査を強化する。
(6)台湾全域の県と市で養豚場の防疫調査を実施し、ブタの健康状態を把握する。
(7)生産・流通の調整を行い、豚肉の供給を安定させる。
アフリカ豚熱は極めて高い感染力を持つウイルスで、感染したブタの致死率はほぼ100%に達する。人に感染する心配はないが、有効なワクチンや治療法がないため、感染拡大を防ぐには殺処分や埋却処分などで対応するしかない。さらに、このウイルスは環境抵抗性が高く、環境中で長期間の生存が可能だ。
アフリカ豚熱は国際獣疫事務局(WOAH)から通報義務のある特定疾病に指定されているほか、台湾でも甲類動物伝染病に指定されている。世界82か国で感染が報告される中、これまで東アジアでは台湾と日本だけが非感染地域を維持していた。台湾にこのウイルスが侵入した場合、初期の試算で約2,000億台湾元(約9,897億円)の経済損失が発生する可能性がある。