台湾と海外のトップレベルの学術交流を促進するため、台湾の最高学術研究機関である中央研究院は今年から、台湾の12の学術研究機関と協力して「台湾ブリッジ・プログラム」を推進する。具体的には2025年から2026年までの期間に31名のノーベル賞受賞者を台湾に招き、講演や学術交流を行う。この日は国立台湾大学で開幕式と、2010年にノーベル物理学賞を受賞したアンドレ・ガイム氏を講師に招いた1回目の講演が行われた。
ガイム氏は「2次元物質グラフェン」の発見とその研究で知られる。グラフェンは驚異的な強度と優れた電気伝導性を持つことから、ナノテクノロジーの新時代を切り開き、電子部品、エネルギー、医療など幅広い分野で応用されている。
「台湾ブリッジ・プログラム」の名誉主席を兼ねる頼清徳総統は、世界が目まぐるしく変化し、地政学的な緊張、極端な気候によってもたらされるリスク、サプライチェーンの再構築といった問題に直面する中で、「絶え間ない対話を通じて、科学・教育・外交の三分野が協力することで、最適な解決策を探し出すことができるだろう」と期待を寄せた。
中央研究院の廖俊智院長は、台湾と世界のトップレベルの研究者たちによる深い交流を促し、ノーベル賞の高い知名度を利用して学生たちに国際的視野を広げるきっかけを与えるとともに、社会全体に基礎科学の重要性を喚起したいと指摘。また、安定した研究資金、自由で開かれた環境、創造性を奨励する研究体制の構築を目指し、台湾の研究者が基礎研究に必要な情熱、独創性、そして何よりも重要な忍耐力について知る機会になればと期待を寄せた。
台湾大学の陳文章学長は、「台湾ブリッジ・プログラム」は科学知識の交流にとどまらず、「理念と価値の架け橋」でもあると指摘。ノーベル賞受賞者との対面式の学術対話を通じて、教職員と学生が海外の最前線にある知恵と研究の精神を直接吸収し、科学研究のエネルギーを高め、視野を広げることができると述べた。
中央研究院の元院長で、台湾出身者として初めてノーベル賞(化学賞)を受賞した李遠哲氏は、「科学の価値は真理の発見だけではなく、人類の理解と平和を促進することにもある」と強調。「台湾ブリッジ・プログラム」は、科学者が文化や地域の壁を越え、人類の未来を共に考える機会を提供するものだとし、「社会と人類の命運へのまなざしを中心に据えるとき、科学は真に持続可能な力を発揮できるだろう」と述べた。