シンポジウムの開幕式では林明昕政務委員(無任所大臣)が挨拶を行い、世界の民主主義が新たな課題に直面する中、台湾が威権体制の名残と向き合ってきた経験を国際社会と共有し、引き続き民主のレジリエンスを強化していきたいと述べた。また、林政務委員は海外の指標を引用し、米国の「フリーダム・ハウス」が発表した2025年度の報告によると、台湾は195か国・地域を対象に行われた自由度ランキングの中でアジア2位となっており、台湾がアジアで最も強固な民主国家の一つとなれたのは、多くの先人たちの犠牲と努力の賜物(たまもの)であり、こうした民主主義の成果は得難く、これからも守り続ける必要があると強調した。
シンポジウムは5つのセッションと1つのフォーラムで構成され、欧州およびアジア諸国の事例を取り上げ、各国の移行期正義や歴史の記憶に関する政策の経験と課題が紹介された。
行政院人権及転型正義処(人権及び移行期正義処)によると、台湾では2022年以来、毎年の「世界人権デー」に合わせてシンポジウムを開催し、そのときどきの人権課題を取り上げて議論し、熟考を促してきた。威権体制の名残がなお存在し、世界規模の情報戦がより複雑さを増す現在において、いかにして歴史を記憶し、威権主義の復活を防ぐかは各国共通の課題となっている。移行期正義は歴史な問題であるばかりでなく、民主主義を強固にするための段階的な取り組みでもある。行政院人権及転型正義処は、「今後も真相の究明と社会的対話を通じて教育の深化と多元的な対話を促進し、歴史の記憶が民主主義の力の源となるよう努めていきたい」としている。