「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(国際人権B規約)への対応の状況と、台湾における司法通訳の現状を把握するため、国家人権委員会の紀恵容副主任委員と王麗珍委員は1年以上にわたり、外事警察、検察官、裁判官、法律扶助基金会の弁護士、特約通訳、書記官、公設弁護人らに聞き取り調査を行うとともに、これらについてまとめた報告書を発表し、台湾の司法通訳制度が直面する問題を指摘するとともに、特別法の制定などを含めた6項目の提言を行った。
紀副主任委員は、台湾では外国人労働者(ブルカラー、ホワイトカラーを含む)や外国人居住者が法廷で弁護を受ける際、その権益がしばしば課題に直面することがあるが、その中核的な問題の一つが通訳であると指摘した。例えば2013年の「特宏興368号」事件を例に挙げると、当時、海巡署の職員が被疑者である外国人労働者を逮捕した。被疑者は船長殺害を認めたものの、言語の壁と専門の通訳の不在により、重要な記録が正確に通訳・保存されなかった。このため「自首」と認められず、判決に大きな影響を与えた。
また、紀副主任委員によると、公共テレビのドラマ『八尺門的辯護人』を見て初めて司法通訳制度の問題に気付いたという裁判官もいたという。紀副主任委員は「現在台湾では約24人に1人が外国人だ。このような高い割合の中で、すべての人が平等に司法へアクセスする権利を持つべきであり、通訳制度は明らかに改善の余地がある」と強調した。
王委員は、通訳者への聞き取りから、司法通訳をめぐる課題について以下のようにまとめた。
- 警察や検察官の捜索に同行する際の安全面の懸念
- 誤訳で法的責任を追及されることへの不安
- 過重労働(同一人物の通訳で、24時間対応した事例あり)
- 被害者遺族に付き添って遺体確認に同行するという要請(本来業務外で報酬もなく、心理的負担が大きい)
- 外国人労働者の仲介業者が通訳を兼ねるという明らかな利益相反
ほかにも、警察や検察での取り調べ段階、あるいは裁判所での段階、さらには矯正機関に至るまで、通訳制度には「アクセスの確保」、「正確性」、「中立性」、「予算・費用支給」という4つの重要課題があり、外国人に通訳が必要かどうかの判断基準、通訳はどういう状況を回避すべきであるか、機関ごとの通訳報酬の差、いかにして通訳の質と正確性を確認するかなど、改善すべき点が多いと述べた。
その上で2人は以下の6項目の提言を行った。
- 司法院が各機関の通訳に関する規範を取りまとめ、司法通訳に特化した特別法を制定する
- 国家レベルの通訳サービス体制の構築または専門機関への委託
- 各段階の資源の統合と十分な予算確保
- 通訳者の所得・社会保障・安全などの保護強化
- デジタル技術によるアシストを活用し、音声認識システムを開発する
- ことばが通じない場合は強制弁護の適用対象に含める