バルト三国を訪問中の呉釗燮外交部長(=外務大臣)が7日、ラトビアのラトビア国際問題研究所(Latvian Institute of International Affairs, LIIA)の招きに応じ、リガ・ストラディン大学(Riga Stradins University, RSU)で講演した。タイトルは、「Latvia and Taiwan: On the Road of Democracy(ラトビアと台湾:民主の道を進む)」で、呉外交部長は国際秩序のシステムが権威主義による挑戦にさらされていることを強調し、台湾とラトビアとの連携深化を呼びかけた。
呉外交部長は、ラトビアと台湾は遠く離れているが民主化の軌跡は似通っていると指摘、両国は自由・人権・法の支配といった普遍的価値を共有する一方で、ともに安全保障上、未曽有の脅威に直面していると懸念した。
呉外交部長は、民主的な政権と独裁政権との対立は現在世界で起きている衝突の核心だとし、独裁政権がルールに基づく国際秩序にシステムとしての課題をつきつけていることで、民主主義陣営はもはやこれを見過ごせなくなったと強調した。
また台湾海峡の情勢について呉外交部長は、中国が台湾に対して長年軍事的挑発や外交的な孤立化、経済的威圧を行う中、台湾は「対話こそ平和を実現するための唯一の道」だとする立場を堅持しているものの、リスクに対しては実務的に向き合わなければならないと指摘。その上で、台湾とラトビアを例にすればラトビアは2024年から徴兵制を正式に実施、一方台湾でも4カ月間の義務兵役訓練制度を1年間の義務兵役に戻すほか、予算も拡大して国防力の強化を図っていると説明した。呉外交部長は、こうした取り組みで権威主義の侵略を抑止しようとしているのだが、それは民主社会にとって自由を失うことはとても耐えられないからだと強調した。
このほか呉外交部長は、ラトビアが台湾の世界保健機関(WHO)参与を支持していることに感謝。国会議員が連名でWHOのテドロス事務局長に対し、台湾が排除されていることへの懸念を伝えたほか、今年5月のWHO総会ではLīga Meņģelsone保健大臣(当時)が間接的に台湾を支持する発言をし、WHOが広く世界を受け入れることの重要性を強調したことを評価した。
呉外交部長はまた、ラトビアをはじめとする民主主義の仲間たちと連携の機会を探り、互いに有利な経済パートナーシップを築く用意があるとし、海外からの台湾向け投資で現在最大なのが欧州連合(EU)で、台湾から欧州の産業に対する投資も半導体やレーザー技術、再生可能エネルギーなどを中心に拡大中だと説明、民主主義国間での経済協力で経済の強靭性を強化し、権威主義国家の経済的威圧がもたらす損害を抑える考えを示した。
呉外交部長は最後に、ロシア・ウクライナ戦争勃発以降、ラトビアは揺らぐことなくウクライナを支持、一方台湾も対ロシア制裁に加わり、ラトビアの非政府組織と協力してウクライナを支援していると説明し、ウクライナの人々が1日も早く日常の生活を取り戻せるよう願った。呉外交部長は、両国が現在享受する自由は得難いものであり大切にしなければならないと強調、民主主義の仲間たちはこれからも奮闘し、団結して勝利をつかむと述べた。
会場に集まった教師や学生たちは講演内容に強い興味を示し、質疑応答では活発に質問、呉外交部長がこれに一つひとつ回答した。呉外交部長は、台湾からの寄付金や人道支援物資がウクライナに提供されていること、チェコやポーランド、スロバキア、リトアニアなどと連携してウクライナ難民の生活支援や学校の再建などを行っていることを説明。さらに呉外交部長は、イスラエルとハマスの衝突によって苦難に陥るイスラエルとパレスチナの人々に対しても台湾は人道支援を行う用意があることを表明した。