外交部は今年、原住民族員会と協力し、台湾の先住民族の若者3名をこのプログラムの全行程(米ハワイ及び台湾での研修)に参加させる。台湾の先住民族とルーツを同じくするオーストロネシア語族の国々との外交や文化的なつながりに新たなエネルギーを注入するのが狙いだ。このため今年は国際関係、地域の安全保障、環境のサステナビリティ、医療・公衆衛生協力、オーストロネシア語族に関する研究について受講するほか、受講者全員で屏東県瑪家郷にある先住民族集落を訪れ、そこでの暮らしを体験する。
外交部の葛葆萱常務次長(事務次官)は開講式で、外交部を代表して一行の来訪を歓迎したほか、「台湾は多様なエスニシティが共存する場所で、豊かな文化と言語を持つ。台湾の先住民族と太平洋の島しょ国の人々は織物、入れ墨、飲食などで似たような文化を持つ。こうした伝統文化は、双方の強い結びつきを示すものだ」と述べ、台湾の外交部がさまざまなアプローチから双方のパートナーシップを深化させ、台湾の先住民族と太平洋地域の人々の文化交流を促進していることを強調した。
葛葆萱常務次長はまた、太平洋の島国は台湾と同様、地域を取り巻く国際情勢の緊張や気候変動による影響といった危機に直面していると指摘。台湾は、地域の安全保障に貢献する能力と決意を持ち、能力構築(キャパシティ・ビルディング)、環境のサステナビリティ、民主主義的ガバナンスの方面において、これからも太平洋の島しょ国を支援していく用意があると述べた。
開講式に招かれて出席したツバルのLily Tangisia Faavae大使は、太平洋の島しょ国は海面上昇などの深刻な脅威に直面しているほか、現在地政学的な要因から、地域協力を強化しているところだと述べた。マーシャル諸島のCassailis Jarom公使は、太平洋地域の発展に対する台湾の支援に感謝し、この協力はインド太平洋地域の平和と安定にとっても重要であることを強調した。
米国在台協会(AIT)台北事務所のKarin M. Lang副所長は受講者に対して、台湾は民主主義的ガバナンス、公共衛生、そして半導体やAIなどのハイテク産業において世界をリードしていると強調。米国は太平洋地域の一国家として、常にインド太平洋地域を外交政策の核心に位置づけており、これからも貿易や投資、ビジネスでの交流を推進していく考えであると述べた。また、米国、台湾、日本、カナダ、豪州が共同で推進する「グローバル協力および訓練枠組み」(Global Cooperation and Training Framework, GCTF)は、災害対策、公共衛生、サイバーセキュリティなどの分野で太平洋諸国の専門家を育成し、この地域のレジリエンス強化と協力へのコミットメントを示していることを説明した。Karin M. Lang副所長はその上で、受講生が台湾で築くつながりが、太平洋の島しょ国、台湾、そして米国の三者間協力を深化させ、ひいては地域の繁栄と安全の促進につながるよう期待していると述べた。
この事業は、米国のカート・キャンベル元国務副長官が2011年に提唱し、始まったもの。2012年には外交部外交学院と「イーストウエスト・センター」が覚書を締結し、2013年以降、合同事業として実施している。毎年、太平洋の島しょ国から未来を担うリーダーたちが選抜され、「イーストウエスト・センター」がある米国ハワイと、外交学院がある台湾の2か所で約2か月間にわたる人材育成のトレーニングを受けている。台湾と米国の友好関係を代表するだけでなく、台湾、米国、太平洋の島しょ国による三者の協力と共栄関係の推進にも大きく役立っている。