農業部の黄昭欽政務次長(=副大臣)、中華民国国際経済合作協会(CIECA)の呂桔誠理事長、それに米台商業協会(USTBC)のロッタ・ダニエルソン副会長は8月25日から30日まで台湾の投資・貿易視察団を率いてフィリピンを訪問・交流した。これは頼清徳総統が提唱する「価値外交」の理念と「経済日不落国(経済の太陽が沈まぬ国)」のビジョンを実現するため、外交部の林佳龍部長(外相)の調整の下、台北駐フィリピン経済文化弁事処(TECO)とマニラ経済文化弁事処(MECO)の緊密な連携の末に実現したものだ。視察団は、台湾とフィリピンが推進する「経済回廊計画」を、米国、日本、フィリピンが推進する「ルソン経済回廊」戦略と接続させ、台湾と米国の企業が協力してフィリピンでの「第三国協力」を展開する機会について模索した。今回の訪問は、台湾が外交空間を拡大し、フィリピンと戦略的パートナーシップを深化させるための大きな進展となった。
外交部の林佳龍部長は就任後、頼総統および行政院(内閣)の支援の下、台湾とフィリピンの関係強化に積極的に取り組んできた。政府は「行政院経済外交作業小組」(経済外交のためのワーキンググループ)や「台湾・フィリピンプロジェクトチーム」を設置。外交部が各省庁のリソースを取りまとめて、台湾とフィリピンの港湾、海運、新エネルギー、スマート農業、半導体産業分野での協力を進めてきた。政府間の政策協働といった連携に加え、台湾の民間企業が持つテクノロジー、製造、AI、スマートソリューション分野での強みを活かして「新国際雁行型連合艦隊」を構築。「チーム・オブ・チームズ(Team of Teams)」の協力体制を構築し、政府と民間が連携して台湾の経済・貿易のネットワークと外交空間を拡大することを目指している。
台湾はフィリピンにとって十大貿易パートナーの一つであり、両国の経済構造には高い補完性がある。外交部は「栄邦計画」の下で、台湾とフィリピンの「経済回廊計画」を推進すると同時に、「台米経済繁栄パートナーシップ対話(EPPD)」の精神の実践と、中華民国国際経済合作協会(CIECA)と米台商業協会(USTBC)が今年5月に署名したMOUに基づき、数か月の努力の末、視察団をフィリピンへ派遣することに成功。台湾とフィリピンが第三国市場を共同で開発するという目標を実践することとなった。
視察団は今回、「ルソン経済回廊」の重点地域を訪れた。農業部、中華民国国際経済合作協会(CIECA)、米台商業協会(USTBC)が視察団を組織したほか、台湾区電機電子工業同業公会(TEEMA)、国際半導体製造装置材料協会(SEMI)、中華民国全国工業総会、全国創新創業総会(NiEA)などの業界団体の代表もこれに参加した。メンバーの業種はICT、半導体、エネルギー、AI、スマート・マニュファクチャリング、港湾設備、スマート農業、スマート畜産、コールドチェーン物流、食品加工、観光などサプライチェーン全体に及び、全方位的に対フィリピン投資および協力の機会を模索した。
今回の視察団の訪問は台湾とフィリピンが一丸となって繁栄を築くための決意を示すものであると同時に、台湾、米国、フィリピンの3か国の経済貿易交流と協力にとっても重要なマイルストーンとなった。外交部は今後も半導体、AI、スマート農業、新エネルギー分野でフィリピンとの協力をさらに深化させることで、台湾の技術的優位性とフィリピンが持つ人材・労働力のリソースを活用して「ノン・レッド・サプライチェーン」(中国企業、中国資本を排除した供給網)を支え、民主主義と自由、そして経済的繁栄を兼ね備えた「第一列島線同盟」の構築を目指すとしている。