EMS(電子機器の受託製造サービス)世界最大手である台湾の鴻海(フォックスコン)はこのほど、フランスの防衛大手タレス(Thales)と協力し、フランスに半導体先端パッケージング・テスト受託(OSAT)工場を建設することを発表した。協業先を含めた総投資額は2億5000万ユーロ(約400億円)を予定し、製品は航空・宇宙、防衛、自動車産業に優先的に供給されるという。報道はその戦略的意義に焦点を当てたものとなっている。呉次長の発言の概要は以下のとおり。
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鴻海に対して対仏投資を強要する強制する権限は我々にはない。しかし、我々はそれをサポートすることはできるし、それをやった。台湾はいま、欧州諸国との連携を最優先にしており、とりわけフランス、英国、ドイツといった民主主義の価値観を共有する国々との関係を重視している。台湾は、より多くのフランス人留学生やエンジニアが台湾にやってきて、半導体産業の発展に参与することを期待している。
台湾の半導体の成功は、決して台湾が単独で成し遂げたものではなく、長年にわたる欧州諸国との協力の成果でもある。例えばオランダのフィリップス、ASML、ドイツのBASF、フランスのエア・リキードなどの企業は、いずれも台湾の産業発展において重要なパートナーであった。台湾は半導体の設計、ファウンドリー、先端パッケージングを含む完全な産業体系を備えている。世界の半導体生産における台湾のシェアは約7割であり、先端半導体に至っては95%、AI向け半導体では100%に達している。これは、台湾がグローバルなサプライチェーンにおいて、取って代わることのできない地位を確立していることを示している。
10年前、台湾企業の対外投資に占める対中国投資の比重は84%に達していた。しかし、2024年にはこれが7%にまで低下した。今年上期は3%未満にとどまった。これは、台湾企業がリスク分散を積極的に進めていることを示している。また、台湾と欧州の民主主義国との協力は半導体に限らない。自動車、航空・宇宙、通信といった分野にも及んでいる。これは互いの経済的利益に合致するだけでなく、中国による「経済の武器化」による制御を受けるのを防ぐとともに、自由で民主的な世界の核心的価値を共に守ることにもなっている。
『La Tribune(ラ・トリビューン)』は経済・財政、産業ニュース分野に強みを持つフランスの権威あるメディア。フランスを含む欧州諸国の経済政策の決定や産業発展に対して、重要な参考資料を提供するとともに世論をリードする役割を担っている。