欧州、米州、アジア太平洋、中東、ラテンアメリカなど9カ国10名の記者によって構成される「2025年政治・経済記者団Ⅲ」が11月2日から8日まで台湾を訪問した。この期間、外交部の林佳龍部長が座談会を、呉志中政務次長(副大臣)が宴席を設けて一行を歓待し、台米関係、台欧関係、中国の脅威、外交部が推進する「栄邦計画」(国交樹立国との協力を強化し、共に繁栄を目指す国際協力の枠組み)、それにロシア・ウクライナ戦争などについて踏み込んだ意見交換を行った。このときの取材内容が、オーストリア、ポルトガル、ウルグアイ、ハンガリーなどの主要メディアに相次いで掲載され、国際社会が台湾の政策や立場、施政方針などを理解するのに役立っている。
林部長は取材の中で、台米関係が米国の国内法である『台湾関係法』や米国の台湾に対する「6つの保証」といった盤石な基盤の上に成り立っていること、双方は民主主義、人権といった基本的価値を共有するだけでなく、安全保障やサプライチェーンの分野でも利益を共有していると指摘。米中関係の発展は、台米関係と並行して進めるべきであり、「台湾を犠牲にしてはならない」と強調した。この発言はポルトガルの『Expresso』の特集記事に採用された。
台欧関係について問われた林部長は、台湾は人工知能(AI)、ビッグデータなどの分野で欧州の「再工業化(Reindustrialization)」に寄与し、欧州の「再軍備」にとって重要なパートナーとなるほか、手を携えて民主主義のサプライチェーン構築に取り組んでいけるだろうと述べた。林部長はまた、ヨーロッパの歴史と文化的土壌には大きな信頼を寄せており、ヨーロッパ社会が中国の域外干渉や権威主義による浸透を受け入れることはないと確信していると強調した。
林部長は、中国の対台湾戦略は経済的威圧と政治的浸透をメインとし、軍事手段は最後の選択肢であると分析。「習近平氏にとって、台湾を買収することは侵攻するより容易であり、台湾を欺くことは買収するより容易だ」と指摘した上で、台湾は抑止力を強化し、国際社会との連携を深めなければならないと強調した。林部長のこれらのコメントは、オーストリアの日刊紙『デア・シュタンダルト』紙に大きく引用された。
また林部長は台湾が推進する「文化外交」を例に挙げ、自身がウィーンを訪れて、劉玄詠駐ウィーン代表(大使に相当)が出演したコンサートに出席したことを紹介。中国側から圧力があったにもかかわらず、オーストリア政府はこれを「プライベートな活動」であるとして介入を拒否した。しかも、オーストリア政府はその後、台湾の運転免許証の承認を再開しており、これは二国間の実質的交流の深化を示す具体的事例となっていると説明した。
ラテンアメリカ方面について林部長は、台湾とパラグアイが共同で推進する「栄邦計画」を紹介。同計画はサステナビリティ、イノベーション、相互尊重を核心に据え、グリーン経済、科学技術への投資、教育協力などに焦点を当てたもので、地域協力の模範となることを目指していると説明した。ウルグアイの電子メディアは、林部長が台湾とウルグアイが代表機関を相互設置し、経済・貿易及び文化分野で連携を深化させることを提案したと報じた。
ロシア・ウクライナ戦争について林部長は、台湾とウクライナは同じように軍事的脅威に直面しており、自由の尊さをより深く理解していると指摘。台湾はロシアによるウクライナ侵攻の発生直後から支援を表明し、さらにブチャ市の浄水施設整備を支援するなど、国際協力と世界の安定への貢献を示していると述べた。この発言はハンガリーの日刊紙『Népszava』が報道した。
このほか、外交部の呉志中政務次長が宴席を設けて一行を歓待。呉次長は、中国の習近平氏が台湾に対して心理戦・世論戦・法律戦などのハイブリッド戦を仕掛けているが、その影響は台湾にとどまらず、EUや世界の半導体供給網(サプライチェーン)の安全にも関わると述べた。呉政次はまた、台湾が「務実的、挑発せず」を原則に、地域の平和と安定を維持しつつ、建設的な役割を果たし続けることを改めて約束した。呉政次の発言については、ポルトガルの『Expresso』およびオーストリアの『デア・シュタンタルト』がを引用した。