頼清徳総統(右)と参議院の親台湾派議員グループ「TY会」の会長である滝波宏文議員(左)。(総統府)
【鈴木馨祐前法相の一行との会見】
頼総統はまず、鈴木議員らがこの重要な時期に来訪し、台湾への支持と関心を具体的な行動で示してくれたことに対し、台湾のすべての人々を代表して心から感謝すると述べて一行を歓迎した。頼総統はまた、鈴木議員が法務大臣として在任中、法務省の省令改正に踏み切り、その結果、今年5月26日から在日台湾人は日本の戸籍の「国籍・地域」欄に「台湾」と記載できるようになったことに触れ、これは在日台湾人の権益を守るだけでなく、台湾と日本の友好関係の強化にもつながったと感謝した。
さらに頼総統は、台湾と日本は長年にわたり自然災害やパンデミックなどの課題に共に立ち向かってきた「まさかの時の友こそ真の友」であると指摘。青森出身の神田議員に対し、今月上旬に青森で発生した地震についてお見舞いの言葉を寄せたほか、いつでも支援できるよう準備を指示していたことにも触れた。その上で、「台湾と日本はどちらも環太平洋火山帯に位置しているほか、同時に第一島線(鹿児島県沖から南西諸島、フィリピンへと連なる線を軸に、南シナ海周辺を含む軍事防衛ライン)における要衝である」とし、権威主義の拡張や経済・貿易の局面の変化という課題に立ち向かうため、台湾と日本は今後も協力を深める必要があると強調した。そして、「台湾と日本が手を取り合い協力してこそ、地域の平和を守り、維持することができ、ひいてはその繁栄と発展をともに築くことができると信じている」と訴えた。
これに対して鈴木議員は、まず先日台北で発生した無差別襲撃事件の犠牲者に哀悼の意を表し、負傷者の早期回復を祈願した。続いて、台湾が先月、福島を含む5県産食品の輸入規制を完全に撤廃し、通常の管理体制に戻したことに言及し、最近日本は中国からさまざまな圧力を受けているが、台湾の人々による日本支援の行動は、台湾が日本にとって真の友人であることを証明しているとして感謝の意を示した。
鈴木議員はさらに、高市内閣は発足からちょうど2か月間が経ったが、台湾と日本の関係の重要性を繰り返し強調していると指摘。台湾と日本は普遍的価値を共有する運命共同体であり、台湾は日本にとって非常に重要なパートナーであり、貴重な友人でもあると述べた。また、地政学的変化に伴い、台湾と日本はいずれも中国からさまざまな圧力を受けているが、「台湾有事は日本有事」であるとして、地域全体の平和と安定を維持することが重要だと述べた。
鈴木議員はそのうえで、「台湾有事」を絶対に起こさせず、武力による現状変更を許さないためにも抑止能力を強化することが必要であるとし、日本はできる限りの支援と防止策を講じると強調した。そして最後に、頼総統の強大な指導力の下、台湾のますますの発展を祈念するとともに、台湾と日本の関係がさらに深まるよう期待を寄せた。
【滝波宏文参議院議員一行との会見】
頼清徳総統は続いて参議院の親台湾派議員グループ「TY会」の会長である滝波宏文議員の一行による表敬訪問を受けた。頼総統は、「TY会」が台湾友好(TAIWAN YUKOU)の頭文字に由来することに触れ、「TY会」に参加する国会議員らが長期にわたり台湾を支持してくれていることに感謝した。また、とりわけ滝波議員については台湾人の夫人を持つ「台湾女婿」(台湾の婿)であるとし、日本の国会でたびたび台湾のために発言しているほか、日本の戸籍の国籍欄に「台湾」の記載が認められるよう尽力してくれたとして強く感謝した。
頼総統はまた、日本台湾交流協会台北事務所の片山和之代表が「台湾と日本の関係は現在、史上最良の状態」と述べことに触れ、台湾と日本はさまざな分野で交流を深めており、台湾あるいは日本のいずれかで困難なことがあれば、いつも手を差し伸べ、助け合いながら双方の友好と絆を示してきたと説明。今年、台湾東部・花蓮で馬太鞍渓のせき止め湖があふれ出し、下流地域で大洪水が発生したときには、日本政府がすぐにお見舞いの言葉を寄せるとともに、国土交通省から水位観測ブイが無償供与されたとして感謝した。また、滝波議員が所属する超党派議員連盟「日華議員懇談会」からも、台湾訪問に合わせて寄付の目録を渡されたとして感謝の意を表した。
これに対して滝波議員は、昨年の双十国慶(10月10日)の期間に頼総統と面会した際には、日本ではまだ戸籍の「国籍・地域」欄に「台湾」と記載できるできる政策が公表されていない段階だったが、実は2022年11月に戸籍における国名表記問題に関するプロジェクトチームが発足され、滝波議員がその座長をつとめ、最終的にチームとして法務省による関連省令改正によってこれを実現することができたと説明した。
滝波議員はまた、日本と台湾が協力を一層強化し、深刻化する安全保障上の課題に共に対処すべきであると主張。日本の高市首相が国会答弁で行った「台湾有事」に関する発言にも触れ、「これは日本の存立危機事態になりうることだ。安倍元首相の政策路線を引き継ぐもので、この表現は正しく、撤回されるべきではない」との認識を示した。そして、自身が過去に農林水産副大臣や経済産業大臣政務官などの要職を歴任した経験から、台湾周辺の情勢、とりわけエネルギー、食料、経済安全保障の問題は、確かに日本の危急存亡に直結する問題だと指摘した。最後に滝波議員は、台湾と日本は地域の安全および価値に基づく協力を今後も深めていきべきであり、今回台湾を訪問した「TY会」の多くの議員も同じ理念の下、より緊密な台日関係を推進していく決意であると述べた。