台湾の自転車産業(電動自転車、自転車、自転車部品製造を含む)の直近10年間の趨勢を見ると、欧米が異常気象に見舞われた2013年、自転車のシェアリングブームが起こった2016年と2017年、それに新型コロナウイルスのパンデミックに伴う都市封鎖でハイエンド自転車の売上が減退した2020年を除いて、すべての年で生産高の成長が見られた。とりわけ2021年は新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、世界的に景気が回復したことから、欧米市場で電動自転車や自転車部品の需要が急速に高まった。このため、台湾の自転車産業の生産高は過去最多の1,768億台湾元(約7,620億日本円)に達し、対前年比34.5%の成長を見せた。2022年は自転車市場全体で在庫のだぶつきが見られたものの、台湾の自転車メーカーは台湾におけるハイエンド自転車と電動自転車の生産に注力したことから、市場の需要は依然高く、1~10月の生産高が1,824億台湾元(約7,872億日本円)に達し、前年通年の生産高を上回った。対前年同期比26.4%の成長で、通年では2年連続で過去最多を更新することになる。電動自転車、自転車、自転車部品の3分野の生産高の推移は以下のとおり。
【電動自転車】
電動自転車の生産高は安定した伸びを見せている。とりわけ2019年以降は、欧州連合(EU)が中国製電動自転車に対して反ダンピング(不当廉売)関税と相殺関税を適用しており、代わって台湾製の電動自転車が欧州市場でシェアを拡大させている。2021年は新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き、欧米市場が相次いで規制緩和に踏み切ったことから、電動自転車の需要も大きく伸びた。台湾の電動自転車の生産高は2012年の8億台湾元(約34億日本円)から2021年には366億台湾元(約1582億日本円)に伸びた。毎年平均54.0%のペースで成長した計算だ。2022年は国際物流の混乱による原材料不足が緩和したことにより、1~10月の生産高が370億台湾元(約1599億日本円)となり、対前年同期比21.9%の伸びを見せた。
【自転車】
台湾における自転車の生産高は2015年に過去最多の565億台湾元(約2,442億日本円)に達したが、2016年は自転車のシェアリングブームの余波を受け、生産高が500億台湾元を張り込み、2年連続で2ケタ減少が続いた。2020年は新型コロナウイルスのパンデミックにより各国が都市封鎖などの規制を実施したため、ハイエンド自転車の売上が減退。生産高は311億台湾元(約1,341億日本円)と、過去10年間の最低となった。しかし、2022年は国際物流の混乱が緩和されて原材料が届くようになり、メーカーも在庫を増やすようになったことに加え、ハイエンドのマウンテンバイクの需要が増えたことから、2022年1~10月の生産高は1,104億台湾元(約4,760億日本円)となり、対前年同期比30.9%と大きく成長した。
【自転車部品】
台湾の自転車産業の発展の歴史は古く、加えて大手ブランドが連携して自転車部品メーカーのアライアンスを形成し、川下から川上までの生態系がそろい、産業の競争力を高めている。このため台湾の自転車部品産業の生産高は年々増加傾向にあり、2021年の生産高は1,077億台湾元(約4,644億日本円)と、対前年比46.6%の成長を見せた。2022年も自転車部品市場の活況が続き、1~10月の生産高は1,104億台湾元(約4,760億日本円)と、こちらも前年通年を上回り、対前年同期比26.5%の成長となった。