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今年も頼清徳総統の特使としてAPEC首脳会議に出席した。議題は異なるが、責任の重さは変わらない。各省庁の全力の支援と協力のもと、代表団は頼総統から託された任務を遂行し、多国間および二国間の交流を通じて各エコノミーとの関係を深め、台湾のAPECにおける存在感と参与のレベルをさらに高めることができた。
現在の経済を取り巻く国際秩序は、地政学的変化、サプライチェーンの再構築、技術革新(イノベーション)、気候変動などの要因により不確実性に満ちている。今年のAPECでは、世界における経済・貿易構造の変化に焦点を当て、特に技術革新、サプライチェーンの安全保障、人工知能(AI)などの議題に注目した。議長国である韓国はAIと人口変動を主要テーマに掲げ、出生率の低下、高齢化、労働力不足、デジタル格差など、アジア太平洋地域が直面する課題について議論した。
主張①
台湾は、経済の強靭性(レジリエンス)の強化に取り組んでおり、各国と連携しつつ、地域の経済発展を促進することを望んでいる。
頼総統から託された3つの主張のうち、最初の「主張」についてだが、多くのエコノミーが台湾のAI、スマート医療、デジタルヘルスケア、中小企業のレジリエンス分野の発展に強い関心を寄せるとともに、これを高く評価していた。
一言で言えば「花が咲けば蝶が寄ってくる」という状況だ。かつて台湾は海外からの投資や協力を引きつけるために多くの努力を要したが、今では多くのエコノミーが自ら台湾に関わろうとしている。これは国民全体の努力の成果だ。今回、代表団は台湾企業に根付いているレジリエンスの遺伝子と環境変化への適応力を他のエコノミーと共有し、多様なパートナーシップの構築を促進して、経済の安定成長を推進することを目指した。
主張②
台湾は、台湾が持つ先端技術産業の経験を各国と共有し、官民一体となってグローバルな課題に対応することを望んでいる。
第2の主張についてだが、各エコノミーはすでに台湾の先端技術産業の実力を知っており、むしろ「台湾がなぜそれほどまでに代替不可能で優れた競争力を持てたか」に関心を寄せていた。台湾は数十年にわたる政府、企業、研究機関の緊密な協力を通じて、精緻で完全な産業エコシステムを構築し、高い優位性を築いてきた。こうした成功事例をAPECの期間中、たびたび他のエコノミーと共有した。
今回のAPECでは中小企業のデジタル・トランスフォーメーション(DX)におけるAIの重要性についても繰り返し強調した。台湾はICT産業で持つ強固な基盤を活かして、中小企業のAI・クラウド技術導入を積極的に支援し、国境を越えた経営能力や競争力を高めている。これは今回のAPECが目指す「デジタルインクルージョン」の理念との一致性が高い。このほか、各エコノミーが協力することによって、より開かれた、安全なデータ環境を整備し、技術の進歩が本当の意味であらゆる人々に幸福をもたらし、新たなデジタル格差を生まないようにすべきであると呼びかけた。
主張③
台湾は、「人」を中心に据えたAI(人工知能)の発展を加速させ、APECが目指す共通のビジョンの実現に貢献することを望んでいる。
第3の主張についてだが、技術の発展は人類社会と文明にとって「もろ刃の剣」である。恩恵をもたらす一方でリスクも伴う。「人」を中心に据えた人間本位の理念こそ、科学技術とイノベーションが存在する目的である。ゆえに代表団は、包摂的かつ責任あるAIガバナンスの枠組みの構築を呼びかけた。経験とスタンダードの共有を通じて、技術の発展が倫理と信頼の原則に沿うようにすべきだと訴えた。同時に、人材とスキルの越境協力を深め、領域を超えた応用能力を持った次世代の労働力を育てることも、現在のAI時代に極めて重要なことであると主張した。
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なお、APEC首脳会議の期間中に、林信義氏と日本の高市早苗首相が接触したことについて、中国の外交部が「一つの中国」の原則に違反すると反発していることについては、「APECの21の加盟国・地域はいずれも平等な立場で会議に参加している。リーダーや代表同士のいかなる交流もごく自然なことだ。すべて合理的な状況であり、何一つおかしなところはない」と指摘。林氏自身も今回、高市首相以外のリーダーたちとこのような交流を重ねており、「至って正常なことだ」と述べた。