海外での中国語学習ブームが高まっている。中国語学校では独特の文化で子どもたちを中国語学習に引き付ける努力も。写真は「シャンチー(中国将棋)」を指す子どもたち。(中央社)
世界で中国語学習ブームが高まる中、海外での中国語教育に新たな現象と衝撃が生まれている。台湾の進める「正体字(繁体字)」による中国語教育が中華系ではない人たちを引き付けている他、中国大陸出身者の子女で「正体字」を学ぶ人も増えているのである。しかし一方で、台湾からの移民が激減していること、及び「漢語拼音(ローマ字ピンイン=中国大陸で使用される発音記号)」の普及などはいずれも中国語学校の経営管理に打撃を与えている。 中華民国(台湾)で華僑政策を担当する僑務委員会(日本の省レベルに相当)によれば、米国のニューヨーク州、ニュージャージー州、ペンシルバニア州、コネチカット州の4州にある中国語学校は大小含めて100カ所を超え、学生数は1万人以上。主には「正体字」、「注音符号(台湾で使用される発音記号)」で中国語を教え、「漢語拼音」も併用している。また、時代に合わせ、インターネットを利用したデジタル教育を補助として取り入れる学校も増えている。 中国大陸の台頭に伴って世界的な中国語学習ブームが起きており、米国で中国語を学ぶことはかなり一般的。学習者が殺到しているわけではないが、ニューヨークにおける僑務委員の童恵珍さんは、「ますます人気が高まっていることは事実だ」と話す。 このブームの中で、中華系以外の移民の第二世代で中国語を学ぶ人の数が継続的に増加。特に南アジア、インドからの移民の第二世代などが多い。また、香港やオーストラリア、及び中国大陸から米国に移民した人たちの子女も増えており、規模はまだ小さいものの、大きな流れとなっている。 ある非公式な統計によると、ニューヨーク州、ニュージャージー州、ペンシルバニア州、コネチカット州で僑務委員会による教材を使用している著名な中国語学校であるロングアイランドの中華文教協会及び中国語学校(Chinese Cultural Associationof Long Island & Chinese School)、慈済(Tzu Chi)、佛光山(IBPS)、新鮮草原中国語学校(Fresh Meadows Chinese School)、ニュージャージー州の維徳中国語学校(Fidelity Chinese School)などでは、過去数年、中華系以外の学生が増え続けており、現在では学生全体の約10%から15%を占めるほどになっている。 ニュージャージー州における中国語教育界出身の僑務委員、戴松昌さんは、「世界の中国語ブームの中で『正体字』こそが主流」、「文化が時代をリードする。文化が学生たちを中国語学習に引き付けている」と強調する。 一方で、海外における中国語教育は現在、さらなる発展を阻むいくつかの課題を抱えている。ロングアイランドの中華文教協会及び中国語学校の甘居正校長は、台湾からの移民と留学生がますます減っていることによる、次世代の人数の激減が学生募集に影響していると話す。また、中国語学校の多くは非営利団体で、家賃やセキュリティ費用などが年々増えていることも学校経営に打撃を与えており、しばしば募金活動やその他の方法で巨額の出費に対応せざるを得ないという。 世界の中国語ブームによって、海外での中国語教育は注目されている。それぞれの地元での学習と文化を通した薫陶は、次世代と台湾とを結びつける理想的な「触媒」である。しかし、移民と留学生の減少によってその次の世代が激減していること、そして米国の公立学校で中国語クラスを設け、第二外国語とするところが徐々に増えていることなどは、海外における中国語学校の今後の発展と運営にとっての課題となっているのである。