6月22日は離島・金門で「現代の恩主公」とされる胡璉氏が亡くなって40年の記念日だった。金門防衛司令部(現指揮部)でかつて司令を務めた胡璉氏は金門が発展するための基礎を築き、地元の人たちから「現代の恩主公」と敬われた。「現代の恩主公」とは唐の時代に金門島を開拓した陳淵が「恩主公」と呼ばれたことにちなんだもの。しかし、金門は戦地としての政務を解かれ、長年にわたって様々な建設が進んだことで、今日では台湾全域で「快楽指数」の最も高い「幸福の島」となった。今、金門に胡璉氏を知る人がどれだけいるのだろうか。
胡璉氏の金門における最大の功績は、金門酒廠(酒造工場)を創設し、人々の食糧不足を解消したことである。胡璉氏の貢献をたたえるため、金門酒廠は「財団法人金門酒廠胡璉文化芸術基金会」を立ち上げて胡璉氏の精神の伝承と実践に努めている。22日には金門県と共に胡璉氏の慰霊祭を行った。
胡璉氏は字を「伯玉」という。慰霊祭は金門県金城鎮の石雕公園にある「伯玉亭」で営まれ、同県の陳福海県長(県知事)と陸軍金門防衛指揮部の郝以知指揮官が執り行った。胡璉氏の遺族と「怒潮軍事政治幹部学校」の卒業生たちが参列。参列者たちは慰霊祭の後、莒光楼に移動し、「胡璉将軍回顧展」の開幕式に参加した。
「怒潮軍事政治幹部学校」は胡璉氏が1949年に開設した。卒業生組織の理事長を務める梁懐茂氏によると、かつて50歳あまりの女性に「金門のコーリャン酒はどこから来たか、胡璉とは何者か」とたずねたが、女性は全く知らなかった。梁懐茂氏はこれを嘆き、今回の回顧展が、若者たちが金門の歴史、並びにかつての人たちが金門のために払った犠牲、流した血を知ろうとするきっかけになればと望んでいる。
胡璉氏は中国大陸の陝西省華県で生まれた。1949年と1957年、二度にわたって金門島における軍政のトップとして、軍と民を率いて「古寧頭の戦い」と「八二三砲戦」を勝利に導いた。1977年に台湾北部・台北市内で病気のため死去。遺骨は金門・アモイの海にまかれた。享年71歳だった。
1949年10月25日、世界に知られる「古寧頭の戦い」に勝利したことで金門の情勢が徐々に安定すると、胡璉氏は地元の人たちに対する「宏教」と「厚生」を施政重点とし、金門における教育と人材の育成、人々の生活の改善と生活水準の向上に努めた。
胡璉氏の金門に対する貢献ではまず、教育の推進と地元の人材育成が挙げられる。胡璉氏は地元での教育を強力に推進し、駐屯する軍の指揮官による学校建設を奨励した。このため尹殿甲将軍は金湖小学校を、郝柏村将軍は柏村小学校を、王多年将軍は多年小学校を、馬安瀾将軍は安瀾小学校を、雷開瑄将軍は開瑄小学校を開設し、軍が学校を建てるという美談を生み出した。胡璉氏はまた、金中、金東の二つの学校を合併させて福建省立金門高校とし、金門県全域から中学生と高校生を受け入れた。さらに、「八二三砲撃戦」の間は学生たちの勉学が途切れないよう、子どもたちを台湾本島の台湾省立学校に預けて勉強を続けさせた。こうした努力により、金門では様々な人材が育ったのである。
胡璉氏はまた、金門での植樹、貯水などで地元民の生活環境の改善に努めた。中央政府による「金門における植樹と貯水」という命令を受けた胡璉氏は金門島全体にトクサバモクマオウを植えることで、砂ぼこりで目も開けられなかった劣悪な環境を改善すると共に、水と土壌の保全も実現した。水の貯蔵では、凹んだ土地に堰を作り、貯水池を建設して雨水が海に流れ込むのを食い止め、貴重な貯水量を確保することに成功した。
さらに胡璉氏はコーリャン酒を生産し、金門の人たちに富をもたらした。金門はかつて土壌が貧弱だったため、サツマイモを主食とするほかなかった。しかし、1951年の末、旧金城の宝月泉の水を利用して「金門コーリャン酒」の生産を開始、さらに「一斤(600グラム)のコーリャンで一斤の米と交換する」政策を行った。同時に、畑を荒れ地にした場合は田租を納めなければならない一方で、コーリャンを植えるなら免税という政策を打ち出し、後の金門県にとっての財政資源を切り開くことに成功した。これが金門県の様々な建設と福利政策の主な財源となっている。
53歳の胡敏越氏は胡璉氏と接触が最も多かった孫。胡敏越氏によれば、近年中国大陸が胡璉氏を「抗日戦争の英雄」とみなすようになり、胡璉氏の「ファン」たちが陝西省華県にある胡璉氏の旧居を訪れている。胡敏越氏はこのため、「台湾と金門がすべきことはもっとあるのではないか」と感じており、胡璉氏が国家と民族のために奮闘した物語を次世代のための教材にできるよう希望した。
「胡璉将軍回顧展館」は先ごろ改修が終わり、館内は4つのコーナーに分けられている。完全な形で残された歴史的な資料と図解により、参観者は胡璉将軍が当時の厳しい環境の中で、いかにして数々の大規模な建設政策を推し進め、金門を現在の繁栄した姿に育て上げたのかを理解できるようになっている。展示は12月31日まで。