2026/06/06

Taiwan Today

文化・社会

小説『開往大埔的紅VAN』の作者、「台湾での創作活動は幸福」

2019/08/02
映画にもなった小説『那夜凌晨、我坐上了旺角開往大埔的紅VAN』の作者、香港のMr.Pizzaさん(写真)がこのほど台湾で初めて短編集を発表した。Mr.Pizzaさんは、台湾の出版業者はきびしい環境においても時間をかけ、どうすべきかを考えようとすると評価し、「台湾で創作活動に当たれることは幸せなことだ」と語った。(中央社)
小説『那夜凌晨、我坐上了旺角開往大埔的紅VAN』の作者、香港のMr.Pizzaさんがこのほど台湾で初めて短編集を発表した。『那夜凌晨、我坐上了旺角開往大埔的紅VAN』は2012年に香港のパソコン情報サイト、HK GOLDEN.COMの電子掲示板で連載、読者たちの注目を集めると瞬く間にネット上で話題となり、書籍として出版されることになったという作品。作者のMr.Pizzaさんは出版にあたってもサイン会を開かず取材もほぼ受けないという、露出を控えたスタイルを保っている。
 
Mr.Pizzaさんによると、『那夜凌晨、我坐上了旺角開往大埔的紅VAN』を書いたのは大学を卒業したばかりの頃でまだ23歳に過ぎなかった。もともと旅行の途中で気ままに書き始めたものが「大埔」への不思議な旅へと広がり、連載するとすぐさまネット上で大きな評判を呼ぶことになった。「大埔」は香港のニューテリトリー(新界)にある地名。この小説は2013年、香港のフルーツ・チャン(陳果)監督によって映画化され(邦題:ミッドナイト・アフター)、全香港が映画を通じて、大きな反響を呼んだこの小説の存在を知った。
 
出版社は当然、次の長編小説を求めた。しかし、Mr.Pizzaさんは『那夜凌晨、我坐上了旺角開往大埔的紅VAN』を書いたことでかえって創作の基本に立ち返りたいと思うようになり、短編小説で力をつけることに励み始めたのだという。
 
今、30歳を越えたMr.Pizzaさんは小説家であり、映画のシナリオライターでもある。そしてこのほど、自身にとって台湾での初作品として、短編集の『把砒霜留給自己』を発表した。様々なメディアをプラットフォームとして発表してきた短・中編小説から、「後悔していない」という作品を選んで1冊にまとめた。『把砒霜留給自己』で主に表現しているのは香港という都市の孤独感。地下鉄の中やひしめき合う人々の間の薄弱な結び付きを伝えているのだという。
 
Mr.Pizzaさんによれば、タイトルの『把砒霜留給自己』(直訳:三酸化二ヒ素は自分にとっておく)は「悪趣味」。実は、好きな歌手だという台湾のボビー・チェン(陳昇)の作品、『把悲傷留給自己』(直訳:悲しみは自分に残して)をもじったもので、「砒霜」(三酸化二ヒ素)と「悲傷」(悲しみ)を広東語で発音すると音が似ていることからこのタイトルにしたのだという。なお、三酸化二ヒ素は猛毒である。
 
Mr.Pizzaさんは、功利主義第一の香港では誰もが自らの利益のために前進しており、犬たちが毎日ドッグレースで意味も無く突進しているようだとした上で、そうした犬たちはリタイアして野原に戻った時、自由に走ることを忘れてしまっているのではないかと香港の人間社会に対する不安を口にした。
 
今年7月初めに数日間訪台し、台湾の出版関係者と交流したというMr.Pizzaさんは、台湾における出版業者はきびしい環境の中でより多くの時間をかけ、どうすべきかを考えようとしていると指摘。そして、そのような台湾で文化の創作者でいられることは幸福だと強調し、香港よりもプロとして働けるのではないかと語った。
 
 

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