ツツガムシ病はアジア太平洋地域で広く見られる風土病で、治療を誤ると患者が死に至ることもある。リケッチアを媒介するツツガムシの幼虫に吸着されることで感染する。ツツガムシは草むらにいて、人間や動物の体に付着する。感染後の潜伏期は約9~12日間。患者は高熱、頭痛、リンパ腺の腫れなどの症状が続き、熱が出てから約1週間で皮膚に紅斑や丘疹状の発疹が現れる。また、ツツガムシに咬まれた箇所には通常「刺し口」のかさぶたが出来る。これがこの病気の特徴。素早く診断し、抗生物質などで治療を行わなかった場合の致死率は60%に達する。
ツツガムシ病に対する従来の診断方法は蛍光免疫染色による血清抗体検査で、人が顕微鏡を使って判断する。しかし、これには経験を積んだ検査員と比較的長い時間が必要だった。衛生福利部(日本の厚労省に類似)疾病管制署の「病媒病毒及立克次体実験室(Vector-Borne Viral and Rickettsial Diseases Laboratory)」は3年かけて「ツツガムシ病抗体迅速検出試薬」を開発。この試薬はすでに国家実験室での定期的な検査に広く使われており、免疫グロブリンM(IgM抗体)に対する感度は80.7%と高く、従来型の約68.8%を上回る。この新しい検出試薬はツツガムシ病が疑われる大量の検体を自動的に検査することが可能で、4時間以内に検体96件の検査と分析を終えられるという。
この試薬は今後民間に技術移転することで台湾でのツツガムシ病検査に用いられるほか、アジア太平洋地域(とりわけ東南アジア諸国)でのツツガムシ病の診断にも提供できるようになる。疾病管制署は、これによって台湾が持つツツガムシ病の検査能力を強化すると同時に、海外での感染拡大防止に向けて世界と協力していく考え。
疾病管制署の「ツツガムシ病抗体迅速検出試薬」に関する研究成果は今年3月に米国の専門医学雑誌、「American Journal of Tropical Medicine and Hygiene(AJTMH)」で発表、7月30日には中華民国(台湾)における特許も取得した。
台湾の「ツグガムシ病抗体迅速検出試薬」はツツガムシ病の抗原を最も多くかつ広く診断できる検出試薬で、7つの抗原(世界的に広がる菌3種=Kato、Gilliam、Karp 並びに台湾でよく見られる菌4種=TW-1、TW-10、TW-19、TW-22)に対する検査が組み合わさっている。そのうちTW-1は台湾で現在最も流行しているウイルスで、TW-10とTW-19は東アジア及び東南アジアでのウイルスに近い。TW-22は台湾特有のウイルス。
同検査試薬は今年6月に米国の国立海軍医療センターでテストを受けた結果、台湾、タイ、スリランカ、マレーシア、オーストラリアなどでのツツガムシ病の検体の診断に用いることが出来ると判断された。これはすなわち同検出試薬が台湾のみならず、世界でツツガムシ病が流行している全ての地域に適用可能で、世界中のツツガムシ病検疫と予防、治療に役立つことを示している。