2025/08/30

Taiwan Today

文化・社会

香港から淡水へ、「アート・ジャミング」のコンセプトを持ち込む

2019/11/29
長年香港を拠点にビジネスを展開してきたミシェルさん(右)は2016年12月、淡水にアート・ジャミングのアトリエを開いた。写真左はその経営を任されている顔艾玨さん。(聯合報)
台湾北部・新北市淡水区に来たら、漁人埠頭で海に沈む夕日を眺め、地元の美味しいグルメに舌鼓を打つのもいいけれど、目の前に広がる美しい景色を、絵筆を使って描き残したいと思うことはないだろうか。アトリエ「秀233(Show233)」はミシェルさんが、香港で流行している「アート・ジャミング(Art Jamming)」の概念を故郷に持ち帰り、ここ淡水に開いたものだ。絵を描くことに興味がある人ならば誰でも絵筆を握り、自由に絵を描くことができる。必要ならば、プロの講師に簡単なアドバイスを求めることも可能だ。
 
ミシェルさんの夢は故郷に絵画教室を開くことだった。長年香港に住みながらも、この夢をずっと捨てきれずにいた。夢を実現しようと思うきっかけになったのは、ある日、ミシェルさんの息子が嬉しそうに、自分が描いた絵を持って帰ってきたときのことだった。息子はミシェルさんに、いま香港で流行しているアート・ジャミング(中国語では「自助画室」)のアトリエで描いたもので、そこは一般の絵画教室とは違い、自由に絵を描くことを楽しむことができ、会社員や若者が集まり、絵を描きながらストレスを発散する場所なのだと教えてくれた。
 
そこでミシェルさんは、もし台湾で絵画教室を開くとしたら、アート・ジャミングの教室を開きたいという思いを持つようになった。そして2016年12月、淡水にアート・ジャミングのアトリエ「秀233(Show233)」をオープンさせた。生活の拠点は香港にあったので、アトリエの経営はプロのマネージャーである顔艾玨さんに任せることにした。
 
ミシェルさんによると、台湾にはまだアート・ジャミングという概念を知らない人も多い。このため長い時間をかけて、アート・ジャミングという概念をさまざまな年代の顧客層にアピールしていかなければならないと考えている。そんな段階であるにも関わらず、ミシェルさんは2018年12月末、淡水の漁人碼頭を代表するランドマーク「情人橋(ラバーズ・ブリッジ)」のそばに、「魚蔵文化館」と名付けた2号店を開いた。
 
アトリエを宣伝する過程で、アート・ジャミングにチャレンジしようという人が少ないことに気が付いた。「自分は絵が描けない」と思っている人が多いからだった。これは「秀233」にとって大きな挫折だった。しかし、一度でも体験した人たちには必ず気に入ってもらえた。彼らは絵を描くというレジャーをとても楽しみ、そして友達にそれを勧めてくれた。次は家族を連れてきて、家族みんなで楽しむ人もいた。これはミシェルさんと顔艾玨さんがアトリエを経営するようになって最も達成感を感じたことだった。
 
アート・ジャミングの最大の特色は、絵画の基礎が全くなくても参加できるということだ。必要な道具は全てアトリエが用意してくれる。絵具、キャンバス、画板、絵筆、木枠、エプロン、音楽、それに美味しいドリンクまで用意されていて、好きなものを注文することができる。特定の時間になると、プロの講師がやってきてアドバイスや指導もしてくれるのだ。
 
こうした即興芸術は性別や年齢に関わらず、老若男女楽しめる。また、親子二代、あるいは祖父母も含めて親子三代で取り組むこともできる。だから、アトリエにやって来るのは若者だけではない。定年退職したシニアが学校卒業以来、数十年ぶりに絵筆を持つというケースも少なくない。彼らはここで退職後の生きがいを見つけている。
 
マネジメントを担当する顔艾玨さんによると、淡水は台湾でも有名な景勝地の一つだが、市の中心地から離れているということもあって、アトリエで雇用しているのはすべて地元の人だ。店長はいずれも、生まれも育ちも淡水で、この土地に特別な思い入れを持っている。客を呼び寄せるときも、自然と「観音山」や「淡水八景」などの言葉が出てくる。アトリエにやって来る人たちも、淡水の美しい夕陽を自分で描くことが好きで、「気軽に立ち寄って、すぐ画ける」というこのアトリエの特徴を気に入ってくれている。ここでは誰もが芸術家になれるのだ。顔艾玨さんは、このアトリエを淡水観光の特色の一つにしたいと意気込む。
 
「秀233(Show233)」では知名度を高めるため、積極的にさまざまな文芸活動を主催したり、参加したりしている。「秀233(Show233)」は自身を、文化・芸術の交流のプラットフォームと位置付けているからだ。顔艾玨さんは「ここは絵画の専門家が絵を教えるだけの一般的な絵画教室とは違って、さまざまな文化イベントも開催しています。アフリカの太鼓を体験できるイベントは、大人からも子どもからも好評でした。アトリエの正面でフラメンコのダンサーに踊ってもらったこともあります。なるべくみんなが興味を持ってくれそうなイベントを実施し、ここを特色あるアトリエにしたいと考えています」と語る。
 
「絵を描くことは難しいことではない。『試してみよう』という気持ちのほうが大切なのだ」ということを伝えるのが「秀233(Show233)」の経営理念だ。アトリエの存在はつまり、勇気をもって新しいことに挑戦し、人生をより豊かなものにするよう人々を応援するためにあるのだ。
 
 

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