「台湾の維管束植物レッドリスト」ですでに台湾では絶滅したとされていた植物「澤珍珠菜(Lysimachia candida)」(トウサワトラノオ)が、民間人によって122年ぶりに台湾北部・基隆市の暖暖区で発見された。発見者の蘇恵昭さんは今年3月26日、暖暖区の湿った草地を訪れて「綬草」(ネジバナ)を探していたとき、ふと下を見たところ何の花かわからない非常に美しい花を見つけた。近づいてみると50株から60株はあることがわかったが植物図鑑を見ても確認できず、写真を撮ってスマートフォンのアプリで照合してはじめて「トウサワトラノオ」であることが判明した。
花の愛好家仲間にたずね、台湾では「すでに絶滅した花」だと知った蘇さんはただちに行政院農業委員会(日本の農水省に相当)林業試験所の鐘詩文副研究員にスマートフォンの会話ソフトで連絡、鐘副研究員は翌日午前には助手と共にその草地を訪れて6株を採集して帰った。そして鑑定の結果、まちがいなく「トウサワトラノオ」であることが確認された。
鐘詩文副研究員によると、過去に「トウサワトラノオ」が台湾で見つかった記録は日本占領時代の1898年、日本の植物学者の大渡忠太郎氏が台南市(台湾南部)新営区で採集したのが最後で、それから122年経って再び見つかったことになる。今回の発見まで、台湾にある「トウサワトラノオ」は国立自然科学博物館(同中部・台中市)に保存されている標本1つのみだった。
「トウサワトラノオ」は湿地や水分を多く含んだ草地、もしくは草地で水のある場所を好む。暖暖区で見つかった「トウサワトラノオ」のグループはわずか1つ。50株から100株にとどまり、広がっている様子は見られないという。
なぜ暖暖区で生息していたのかについて同副研究員はいくつかの原因が考えられるとした上で、まず種子が非常に軽量であるため台風や気流に乗って台湾にやってきた可能性を指摘、次に種子が水鳥の羽に付着して台湾に飛来した可能性、そしてトウサワトラノオが中国大陸の福建省沿海地域で生息していることから、旅行者が知らず知らずのうちにその種子を靴や衣服に付着させて台湾に入境したか、あるいは故意に台湾に持ち込んだ可能性を挙げた。
ただ鐘副研究員は、100年あまり前には台北市(台湾北部)や台南市(同南部)でトウサワトラノオを見ることが出来たわけで当時は台湾のいたるところにあったのかもしれないとして、どこかでひっそりと生息していたトウサワトラノオが何らかの理由で暖暖区で育つことになった可能性も指摘した。
トウサワトラノオは一年生もしくは二年生の草本。全体的につるつるとして毛は生えない。高さ30センチから60センチに育つ。初めは花序(花の配列)が短く密集しているが、咲いているうちに徐々に細長くなり、花冠が白いベル状になる。花径は0.5㎝から0.7㎝だという。