この伝統カヌー「アリンガノ・マイス」は2007年に建造され、ミクロネシア連邦ヤップ州のサタワル島の住民で、スターナビゲーション(星の航海術)の航海士であるマウ・ピアイルック(1932-2010年)氏、尊称「パパ・マウ」に献呈された。マウ・ピアイルック氏は、計器を使わない伝統的な航海法に精通した航海士であり、生涯にわたってその知識を惜しみなく伝承した。船名「アリンガノ・マイス」はサタワル島の言葉で「落ちたパンノキの実」を意味する。サタワル島には、落ちたパンノキの実は誰でも拾って良いというルールがあり、「美味しい実は奪い合うことなく、みんなで分かち合う」という思いやりを象徴する言葉だ。「航海の知恵」は自然の恵みのように島しょ間で分かち合い、世代を超えて受け継がれるべきものであるとの願いが込められた。
「アリンガノ・マイス」は昨年(2025年)にもパラオ-台湾の航海を達成した。当時は、台東県の離島である蘭嶼と台東に寄港して、台湾とパラオの「オーストロネシア航海交流」に重要な一章を刻んだ。今年はさらに規模を拡大し、複数の国の港を巡る。
「アリンガノ・マイス」は2月15日にパラオを出航。西太平洋を横断し、台湾、沖縄、グアム、サイパン、サタワル島、ヤップ島を巡って再びパラオへ戻る。総航程は約6,200カイリ、期間は約4か月に及ぶ。そのうち台湾南部の高雄には3月7日午後1時ごろ到着する予定だ。続いて3月21日には台東、3月24日には花蓮にも寄港する。海洋委員会は、原住民族委員会、国立中山大学および航海コミュニティと連携して「アリンガノ・マイス」の到着を歓迎する。また、各界に対して、この航海をともに見届け、台湾と太平洋の島しょ国が手を携えて「持続可能な海洋」の実現に邁進するため、重要な一章を刻もうと呼びかけている。
今回の航海も計器は一切使用せず、オーストロネシア語族の祖先たちが読み解いた星の運行や海流のリズムに従って目的地へと向かう。指揮を執るのは「パパ・マウ」の息子であり航海士のセサリオ・スウェラル(Sesario Sewralur)氏だ。パラオ、ミクロネシア連邦、米国、そして台湾から集まった13名の乗組員とともに祖先の知恵を実践する。そのうち台湾から参加するのは財団法人台東県獵人学校教育基金会の亜栄隆・撒可努(Sakinu Yalonglong)さんと杜詩豪さんの2名だ。
「アリンガノ・マイス」は実際の航行に加え、台湾、日本、ミクロネシア各地で文化交流、教育普及、地域活動への参加などを行い、「航海」を通じて国境を越えた対話と世代継承を促進する。
海洋委員会は、「アリンガノ・マイス」が台湾がやってくることは、台湾が自らを「海洋の子」として再認識する重要な契機になるだろうと述べ、歓迎している。