昨年の金馬奨(ゴールデン・ホース・アワード)で作品賞をはじめ計5部門の賞を獲得した歴史大作『大濛』(A Foggy Tale)の大ヒットや、クランクアップしたばかりの映画『世紀血案』をめぐる論争(実際に起きた事件を扱っており史実の捉え方に各方面から強い疑義が呈されたため現時点で公開は未定となっている)を受けて、台北101ビルの賈永婕董事長が早速、事件の起きた現場である義光教会(旧林義雄宅)、中正紀念堂の常設展「自由花蕊(Flowers of Freedom)」、国家人権博物館を自ら訪れるなどしたことで、台湾社会では台湾史の補講ブームが巻き起こっている。この流れを受け、国立中正紀念堂管理処は、各分野の専門家を招き、3月下旬から全9回の講座「自由花蕊名家綻放講堂」を中正紀念堂演芸ホールで開催する。ポップカルチャー、映画、写真、文学など多角的な視点から、この台湾という土地をあらためて見つめ直し、物語を共有し、自由を求める民主化への歩みが異なる世代の中でどのように受け継がれ、花開いてきたかを振り返る。
中正紀念堂管理処によると、この常設展「自由花蕊」は開幕以来、4か月近くで延べ11万人を超える来場者を記録し、台湾史の補講ブームの中で、台湾の歴史をあらためて知りたいと願う若い学生たちが多く訪れている。SNSの書き込みや会場に残されたメッセージからは、観客の率直な感動を見て取ることができるという。「みんなぜひ時間を作って『自由花蕊』を見に行ってほしい。入場無料でしかも『台湾の民主の価値』をあらためて感じられる場所」、「展示を通して、権力がいかに日常の暮らしに浸透するかを目にし、一見取るに足らないように見える理由が、実は権威主義体制の支配の論理から来ていることを理解した」、「向こうのほうから蔡(焜霖)さん(2023年に92歳で他界した、戒厳令期の白色テロのサバイバー)の声が遠くに聞こえてきて、涙がはらはらとこぼれた。今でもずっと先人たちに守られていると感じた」、「高校の歴史の授業中に寝ていたのか、それとも歴史の教科書の記述があまりに印象に残らなかったのか、ここに足を踏み入れ、スペインとポルトガルの両国の歴史や、台湾の民主化の道のりに関する詳細な記録を目にして初めて、『自由な空気は決して当たり前のようにあることではない』と深く自分に言い聞かせることができた」といったコメントが寄せられている。
文化部によると、今回のシリーズ講座「自由花蕊名家綻放講堂」は、講師陣も充実している。東呉大学社会学科の何撒娜副教授、記者で作家の阿潑(黄奕瀠)さん、全米図書賞受賞作家の楊双子さんと翻訳家の金翎さん、文学賞を数多く受賞している作家の朱宥勳さん、金馬奨審査員で国立台北芸術大学複合芸術大学院の孫松榮教授、世界の広告業界における最高の栄誉「カンヌ・クリエイティブ賞」の審査員を務めたこともあるメディア界のエキスパート呉怡慈さん、Lightbox写真図書室創業者の曹良賓さん、作家の呉介禎さん、沐育股份有限公司COOの施景耀さん、青田七六文化長の水瓶子(簡肇成)さん、フランスの社会科学高等研究院(EHESS)社会学博士の楊豊銘さんらが名を連ねている。テーマは、ポップカルチャー、文学、映画、写真、英語圏における台湾叙事、都市の街歩き研究、食による外交など多面的な知識の共有と交流を通じ、台湾の人権と歴史の物語をさらに深く知ることができる内容となっている。
3月は2回の講座が行われる。第1回は3月22日午後、何撒娜東呉大学社会学科副教授と作家の阿潑(黄奕瀠)さんが「台韓ポップカルチャーはいかに歴史と社会に応答しているか」をテーマに、一般に広く知られているポップカルチャーを題材として、台湾の映像作品『大濛』『波の音色(原題:聴海湧)』における白色テロや戦後の軍事裁判の歴史的記憶に関する叙述手法を分析し、韓国ドラマ『ミセン―未生―』『トガニ 幼き瞳の告発』、K-popのアイドルグループ少女時代やBTSの楽曲が、いかに韓国の現在の社会問題に応答しているかを探る。
第2回は3月29日午後、施景耀さんが「民主自由、ディープな萬華の旅」をテーマに、台北の西端にある万華(旧名・艋舺)がよく知られた旧市街というだけではなく、台湾の民主の発展と変遷の証人でもあることを紹介する。地元出身の施さんとともに、艋舺の歴史の現場から、古い街並みに残された民主主義の痕跡を探る。
講座の詳細情報や申込方法については、中正紀念堂公式サイトまたはFacebookのアカウントで紹介されている。申込は「https://reurl.cc/yOnpn8」、または電話:(02)2343-1100(内線1177)で受け付けている。
【自由花蕊名家綻放講堂】
会場:中正紀念堂1階演芸ホール
3/22(日)14:00〜16:00 台韓ポップカルチャーはいかに歴史と社会に応答しているか
何撒娜(東呉大学社会学科副教授)/阿潑(黄奕瀠)(記者、作家)
3/29(日)14:00〜16:00 民主自由、ディープな萬華の旅
施景耀(沐育股份有限公司COO)
4/7(火)18:00〜20:30 沈黙させられた声から、アルゴリズムに導かれる眼球まで―言論の自由の日記念イベント(内政部・文化部主催)
司会・劉珞亦
陳文彬(映画監督)/翁煌德(映画評論家)/南爸講(ユーチューバー)/張茵惠(メディア関係者)/鄭竹梅(鄭南榕基金会董事長)
4/11(土)14:00〜16:00 人権の風景を読む―街歩きの物語から
水瓶子(簡肇成)(青田七六文化長)
4/25(土)14:00〜16:00 民主のタピオカミルクティー:フランスにおける台湾料理外交
楊豊銘(フランス社会科学高等研究院(EHESS)社会学博士)
5/16(土)14:00〜16:00 写真、文学、そして記憶:台湾人になるための未完の道
曹良賓(Lightbox写真図書室創設者)/呉介禎(作家)
6/13(土)14:00〜16:00 映画は(不)自由の中から何を求めるのか?
孫松榮(国立台北芸術大学複合芸術大学院教授)
6/27(土)14:00〜16:00 彼らが小説を書いていないとき:作家の文学的関心、市民の行動実践
楊双子(作家)/朱宥勳(作家)
7/18(土)14:00〜16:00 英語圏における台湾叙事:文学翻訳とイシュー報道の視点と実践
Emily(呉怡慈)(鬼島之音PODCASTラジオ・プロデューサー)/金翎(翻訳家)
【自由花蕊常設展】
場所:中正紀念堂常設展示ホール
開館時間:毎日午前9時から午後6時まで