文化部の李遠部長。(写真:文化部)
■呉錫徳さん
淡江大学フランス語学科名誉教授
フランス語教育や翻訳、フランス文学・思想の普及に尽力してきた。知識への強い憧れを胸に台北からパリへ渡って学び、帰国後は淡江大学で約40年にわたり教鞭を執り、3,000人近くの学生にフランス語を教えてきた。また、1996年に「中華民国仏語教師協会」を、2014年に「台湾仏語通訳・翻訳者協会」を設立。台湾で初めてとなる「世界フランス語の日」のイベントを開催したり、「仏語翻訳賞」を開設するなどした。台湾におけるフランス語教育に対する寄与が認められ、2016年にフランス政府から「教育功労章」(パルム・アカデミック勲章)を授与された。フランス語教学に関する著書も多数ある。
呉錫徳さんは受賞スピーチで、45年前に台北からパリへ留学したが、フランスでの学業を終えた後、「故郷には自分が必要だ」と強く信じて台湾に戻ることを選び、フランスから授かった「知識の鍵」をフランス語教育、翻訳、出版に役立ててきたと振り返った。そして、45年前に台北からパリへ向かった長い旅について、「あの旅は決して本当の意味で終わりを迎えたことはない。一つ一つの出会いや交流を重ね、知識が次の世代へ受け継がれることで、それは今も続いている」と述べ、今回の受賞が自身のキャリアの終着点や達成を意味するものではなく、台仏間の知識と文化、友情に対する一つの敬意を表すものだと語った。
■Victor Louzonさん
ソルボンヌ大学人文科学部歴史学科副教授
Louzonさんは長年、台湾近代政治史や1945年の政権移行時期の台湾を研究してきた。これまでに多くの論文を執筆し、現在は学部1年生から修士課程の学生までを対象に台湾史の授業を開講。2023年には初めてフランス語で、二・二八事件について本格的に掘り下げた専門書を出版した。その研究を通じて、台湾の歴史的経験と民主化の歩みが、欧州の学術研究や公共的な議論の場へと届けられている。
Louzonさんはスピーチで、自分と台湾との出会いは「誤解から始まったようなもの」と振り返った。当初は、指導教授が興味のある課題を取り上げようと、二・二八事件の研究に取り組んだからだ。しかし間もなくして、本当の問題の核心は台湾史をどのように記述するか、すなわち「台湾を自らの歴史の主体とし、決してより大きな舞台の脇役にしないこと」であると気がづいた。一方で、「フランス人である自分に、台湾人の『脱中心化』について語る資格があるのだろうか」と不安を抱いたこともあったという。それは、台湾の人々が国際舞台で受ける制約や不確実性は、決して容易に自分たちの経験と比較できるものではないからだ。しかし、Louzonさんが台湾で出会ったのは、心から自分を歓迎し、寛大な気持ちで受け入れ、そして完全に学問の自由が保障された世界だった。「こうした環境は、台湾の民主主義や研究機関の専門性の高さだけでなく、台湾がアイデンティティーをめぐる問題を絶えず見つめ直し、自らの能力を深く信頼していることの表れでもある」と指摘。そして、「この自信は、より成熟した愛国主義の一つの形だ」として、とりわけ今日、多くの人々が権威主義体制の表面的な安定性を羨むようになっている中で、「この点は、私たちが特に指摘する価値があるのかもしれない」と語った。