2025/10/02

Taiwan Today

観光

台湾の作家たちが描くグルメ本

2019/04/12
台北市(台湾北部)の東区商圏と呼ばれるエリア(忠孝東路4段一帯)では、旧正月が明けて3か月のうちに、数十年続いた老舗レストランなどが家賃の値上げに耐えられず、次々と姿を消していった。写真の料理も、今年3月末で姿を消したレストランのもの。(聯合報)
2019年は台北エリアに住む人々、特に東区商圏と呼ばれるエリア(忠孝東路4段一帯)の美食家にとっては残念な幕開けになったに違いない。旧正月が明けて3か月のうちに、数十年続いた老舗レストランやよく知られたチェーン店などが家賃の値上げに耐えられず、次々と姿を消していったからだ。大手新聞紙『聯合報』の書評担当者はこれを機に、飲食関連の代表的な書籍をリストアップした。文筆家たちが推す台北のグルメ、美食家なら知っておきたい飲食知識、舌が肥えた人々にトライして欲しいレシピ本、それに台北以外のグルメを紹介した本もある。
 
文筆家たちの推しグルメ
◎書名『台北・職人食代』
 著者:王瑞瑤、毛奇、林家昌、梁旅珠、魚夫、焦桐、番紅花、楊子慧、蔡珠児、諶淑婷
 年代の異なる10名のグルメ作家たちが共同で執筆した一冊。台北市内で数十年の歴史を誇る名店を訪ね、シェフたちの職人精神や、黙々と料理を作り、店を経営する姿を文字で表現し、台北グルメの奥深さを浮き彫りにした。10名の作家が紹介しているのは以下の名店。
 欣葉台菜:お粥もれっきとしたレストランのメニュー(王瑞瑤)
 吃吃看小館:上海料理の家庭の味、おじさんとおばさんの食堂(毛奇)
 東一排骨本店:古きよき時代の味(林家昌)
 華泰九華楼:子供のころから変わらない華麗な広東料理(梁旅珠)
 福州新利大雅:わざわざ福州まで福建料理を求める必要もない(魚夫)
 上林鉄板焼:店内で常に新しい楽曲を奏でる指揮者(焦桐)
 金蓬莱遵古台菜:いま台湾料理が熱い、台湾精神と心意気のように(番紅花)
 大三元酒楼:クラッシクな広東グルメから垣間見る栄町の栄華 (楊子慧)
 六品小館:家庭料理、平凡な日常を極める(蔡珠児)
 好年年豬腳:80年代風の町食堂の自慢の煮込み料理(諶淑婷)
 
美食家なら知っておきたい飲食の知識
美食家ならば、ただ美味しい料理を味わうだけではダメだ。食材の選び方や、最も美味しい食べ方なども押さえておいてほしい。グルメ・レストランに関するコラムニストとして知られる胡天蘭さんは、父親に言われた「食べることが好きなことは恥ずべきことではない。しかし、食べることを知らないのは恥ずべきことだ」の一言により、美食の追求に生涯を捧げることを決意したという。美味しいものを好きなだけ食べているとき、これらの料理がどこから来たものか、どういう名前を持つのか考えたことはあるだろうか?食材に関して、あなたはどれだけのことを知っているだろうか。
◎書名『台湾味道』
 著者:焦桐
  この本の主役は台湾の料理たちだ。作者は、これらを実際に味わい、それぞれの台湾料理の味とストーリーを文字によって表現した。この本を通して、台湾の美食、その歴史、多様な文化、台湾人の生活スタイル、台湾人の思い入れなどを理解することが出来る。台湾人が台湾の味を描いた、最も優れた美食文化の本である。
 
食べる、作る、そして自慢する
美食家なら、よく食べ、よく知り、おそらくは様々な料理を目にしており、料理の仕方も少しなら分かるだろう。一人で楽しむよりは、全身全霊を傾けて料理を作る感覚が好きな人や、ほかの人と美味しいものを分け合うのが好きな人もいるかもしれない。もし、親しい人と忘れがたい味の思い出を残したいと思うのなら、あるいは重要な日を格別素晴らしい瞬間で記念したいと思うのであれば、自ら厨房に立って料理に腕を振るうのはいかがだろうか。
◎書名『灶辺煮語:台湾閩客料理的対話』
 著者:陳淑華
 台湾で初めて出版された閩南(びんなん)や客家(ハッカ)の料理に関する文化事典である。「金鼎奨」と「開巻年度好書奨」を受賞したことがある作家の陳淑華さんが、3年間の取材の後、1年間かけて執筆した大作である。内容は大きく「煮食語典(レシピ)」と「田野随筆(エッセイ)」の2つに分けられ、13分野の料理に関する動詞105個、独自取材で集めた285品の秘伝のレシピ、11種類の料理方法の比較・分析、「説菜人(客に料理を紹介する人、ワインのソムリエのようなもの)」12名のインタビュー、15種類の食べ物のルーツの考察などが盛り込まれている。さらに付録として「オンライン音声注釈」があり、読者がルビを参考に、台湾語や客家語の料理に関する動詞や、関連の料理名の正しい発音を学べるようになっている。
 
台北以外の美味しい収穫
台北エリアの名店が減ったからといって、それが何の関係があるだろうか。台北を少し離れれば、ほかにも美味しいレストランはたくさんあるのだ。
◎書名『雄好呷:高雄101家小吃慢食、至情至性的尋味記記録』
 著者:郭銘哲
 構想から完成までに6年の歳月をかけた大作。誠品書店のグルメコラム「高雄味道」に書いた文章をベースに、内容をさらに膨らませた。同様の書籍とは一線を画すため、「地元の高雄人も大好きな屋台」や「路地にある無名の人気店を探せ」というコンセプトを強調している。

◎書名『楽暢人生報告書:魚夫全台趴趴走』
 著者:魚夫
 グルメコラムニストの魚夫さんが描いた7つの在来線の駅(基隆、台北、新竹、台中、嘉義、台南、高雄)のスケッチが収録されている。これを骨格とし、さまざまなグルメや歴史ある建築物を訪ね歩く。手書きの挿絵がふんだんに使われているほか、自身で撮影した写真、編集した動画もある。動画は書籍に掲載されているQRコードをスキャンすると見ることができる仕組みになっている。台北市の柯文哲市長はこの本に「誰かに『今晩何を食べた?』と聞かれたら、私はいつも『結局のところは炭水化物、タンパク質、脂肪の組み合わせだよ』と答える。そんな美食とは全く縁のない私が、この本を一気に読んでしまった。最初から最後まで、読み終わった後も、まだその後味を楽しんでいる」と推薦の言葉を寄せている。

◎書名:『鹿港尋味:揭開「正宗古早味」蘊蔵的飲食伝奇』
 著者:心岱
 かつて台湾中部最大の港町だった彰化県鹿港鎮。都市開発計画で縦断鉄道のルートから外れ、高速道路も近くを通らなかった。しかし、捨て子のように忘れられたまま時間が流れたことから、かえって飲食の近代化の衝撃を受けずに済んだ。このため、この地域では台湾料理のオリジナルの味が残っている。鹿港出身の作家である心岱さんが「飲食」をテーマに故郷の街角を歩き回り、地元の美食家、飲食店の料理人、伝統菓子の職人、路上や市場の屋台の店主などに話を聞き、鹿港に300年前から伝わる「辦桌(屋外にテーブルを並べ、大皿料理を楽しむ宴会)」と呼ばれるスタイルの料理、食材、B級グルメ、スイーツ、祭祀の飲食など、さまざまな飲食のルーツを詳しく読者に伝えている。
 

ランキング

新着