台北市文化局(台湾北部)は官民連携で歴史的建造物の有効活用を目指す「老房子文化運動」を推進している。その一環としてこのほど、台北市中正区厦門街94号にある「旧厦門街派出所」のリノベーション工事を行った。2年の修復工事を経て13日、レストランを併設する文化施設「厦川玖肆」がオープンした。
「旧厦門街派出所」は日本統治時代の昭和11年(1936年)に建てられた「川端町派出所」を前身とする。当時ここは水運と陸運の要衝で、川には大きな橋がかかり、鉄道も走っていた。鉄筋コンクリート造り、タイル張りのこの建物は、1930年代に流行したモダニズムスタイルを反映したものだった。しかし、2010年に厦門街派出所が転出して以来、建築物は放置され、風化が進むままになっていた。
2019年に曽士綱さんとその設計チームが修復及び運営の権利を落札した。チームは当時の外観の復元を目指した。当時と同じ色のタイルを作るため、釉薬と土の配合を何度も変えて試し、それから焼き物の専門家に依頼して13本の溝が入ったタイル8000枚近くを焼いた。さらに、新しく焼いたタイルの色合いやスタイルが当初のタイルと同じになるよう工夫した。建築物の内部についても、なるべく古い資材をそのまま使ったり、間取りを維持するようにしたという。
こうして2年の歳月を経て「廈川玖肆」が完成した。1階はレストラン、2階は多機能スペースで、展覧会やカルチャーイベントなどを行う空間となっている。3階はオフィスだ。今後は周辺地域の文化や歴史についての調査を行い、将来的には紀州庵文学森林(1917年竣工の元料亭をリノベーションした文学・文化拠点)や台湾文学基地(日本統治時代から残る7棟の日本家屋をリノベーションした文化施設)など台北市内のリノベ施設と連携を図り、地元の文化的文脈を深め、「城南(台北市の南のエリア)」における新たな文化空間となることを目指す。