中華民国中医師公会全国聯合会(中華民国漢方医同業組合全国連合会)が10日に開いた記者会見で、黄芩などの漢方薬材が新型コロナウイルス(COVID-19)の治療に有効であることを発表した。同聯合会によると、漢方と西洋医学併用の形で患者21名を治療、味覚障害などの症状を改善すると共に入院期間を短縮することに成功した。退院後の状態もいい。この配合剤のライセンスはすでに漢方薬メーカーに供与しており、早ければ年末までに米国への販売も可能になるという。
三軍総医院(病院、台湾北部・台北市)中医部(漢方部)の黄怡嘉主任によると、漢方と西洋医学を併用して新型コロナウイルスの治療にあたる方式では感染予防物資の使用量を減らすため、漢方医は患者に直接触れないで診察する。直接診察できない舌や脈などの状態は臨床看護のデータで補い、さらに患者の病状に応じて期間ごとの処方を行う。
この方法では主に患者を軽症、重症、重体、回復期の4つに分けて治療。今回は三軍総医院と台中栄民総医院(病院、台湾中部・台中市)、彰化基督教医院(病院)と衛生福利部彰化医院(病院、いずれも同中部・彰化県)、高雄長庚紀念医院(病院、同南部・高雄市)で合計21名の患者を治療した。内訳は重体が1名、重症が5名、軽症が15名。漢方薬の服用を始めると約8日後には隔離が解除出来、薬への拒絶反応も現れなかった。
彰化基督教医院中医部の黄頌儼主任は、漢方薬を飲んだ患者は発熱や咳、たん、筋肉痛、下痢、食欲不振などの症状が緩和されたほか、味覚障害の改善もみとめられており、軽症者に対しては入院日数を減らせる可能性があると指摘している。
「新型コロナウイルスに対する漢方医学の段階的治療ガイドライン」によると、漢方では病状に応じて治療を分けるほか、3種類の漢方薬を用いる。3種類の漢方薬とはまず、ウイルスに対抗する漢方薬の板藍根、魚腥草、黄芩。2つ目は免疫を調整する漢方薬の石膏、綿茵陳、黄芩。そしてこれら漢方薬治療に、支持療法用として体質強化、循環促進、胃腸機能強化のための漢方薬を合わせる。
台湾最大の中国医学の研究所である衛生福利部(日本の厚労省に類似)国家中医薬研究所の邱文慧副所長によると、新型コロナウイルスに対する漢方の配合剤は煎じ薬のほか、漢方製剤も92%の効果が認められており、すでに一部の漢方薬メーカーにはライセンスが供与され、さらに商談中のメーカーもある。台湾ではすでに感染が下火となり、新たな感染者もほぼ見つからない状態となっているが、大手漢方薬メーカーの順天堂薬廠などは米国に支社があり米国での販売を希望。米国は漢方薬を医薬品ではなく食品とみなしているため、早ければ今年末にも米国での販売が実現する可能性があるという。
衛生福利部は今年、新型コロナウイルスの感染が広がり始めると、「新型コロナウイルスに対する漢方薬と西洋薬の併用療法モデル確立計画」を推進、漢方医が新型コロナウイルスの感染者を受け入れて治療することを経費の面でサポートした。また、衛生福利部は中央感染症指揮センター(新型肺炎対策本部)と共に「新型コロナウイルスに対する漢方医学の段階的治療ガイドライン」を作成、感染者を軽症、重症、重体、回復期の4種に分類した。
今回、開発された漢方薬は「台湾清冠一号」と命名され、5月には漢方薬メーカーにライセンスが供与された。台湾では感染が収まりつつあるため、各国の感染対策を支援できるよう、感染拡大が深刻な外国への輸出が計画されている。ただ、処方に際しては多くの国で毒劇物とされ使用が制限されている麻黄などは取り除く。なお、この新型コロナウイルスに対する漢方配合剤の特許と「台湾清冠一号(TAINOCOVIR)」、「福爾摩沙一号(FORMOCOVIR)」の商標の申請も行われているということ。