シンクロトロン(円形加速器の一種)の研究を行う台湾の科学実験施設「国家同歩輻射研究センター(National Synchrotron Radiation Research Center、略称NSRRC)」は、世界トップクラスの学術研究機関であるドイツのマックス・プランク研究所(MPI)と共に、台湾北部・新竹に国際研究センターを設置する考えを明らかにした。台湾の科学界にとって、海外の研究機関との協力が大きく前進することになる。
国家同歩輻射研究センターは4日、「マックス・プランク研究所の台湾での国際研究センター設置に関する記者会見」を開催した。マックス・プランク研究所は「ドイツ科学界の揺籃」と呼ばれ、1948年以降、物理、化学、医学などの分野で合計18名のノーベル賞受賞者を輩出してきた。
マックス・プランク研究所の荘鎏豪(Liu-Hao Tjeng)主任によると、荘主任の研究チームは20年以上前から国家同歩輻射研究センターのシンクロトロンを利用して実験を行ってきた。今年はさらに新竹に先端材料の研究を行う「前瞻材料研究中心(enter for Complex Phase Materials)」を設置する予定で、これにより国家同歩輻射研究センター、国立清華大学(新竹市)、国立交通大学(新竹市)との研究や人材交流を拡大し、ドイツと台湾の科学研究の協力ネットワークを広げたい考え。
国家同歩輻射研究センターが傘下に持つ放射光施設「台湾光子源(Taiwan Photon Source、略称TPS)」は、「台湾の光(誇りの意味)」と呼ばれるもの。2016年9月に運用を開始したもので、台湾では史上最大の投資が行われた重要な研究器材。約70億台湾元(約254億日本円)の経費が投入され、すべて台湾の研究チームによって運営されるなど、世界に誇る成果を上げており、ひいてはマックス・プランク研究所の対台湾投資を呼び込むこととなった。
国家同歩輻射研究センターの陳力俊董事長(会長)によると、「台湾光子源」が発生する高輝度のX線は、現在のところ世界で最も明るいもので、その技術は少なくとも2年間は世界をリードすると見られている。「台湾光子源」を利用するため、すでに多数の海外研究機関が台湾にやってきている。しかし、実際に対台湾投資を決めた研究機関はマックス・プランク研究所が初めて。同研究所はすでに150万ユーロを投入して、「台湾光子源」にビームライン実験装置を建設している。
国家同歩輻射研究センターと20年以上にわたって協力関係を続けている荘鎏豪主任は、「台湾の研究者は非常に高い能力と積極性を持っている」と評価。今後の協力拡大に期待を寄せている。「前瞻材料研究中心」の完成後、台湾とドイツは毎年40万ユーロを投入し、若い科学者、博士課程の学生、博士研究員などの研究を支援し、後進の育成に力を入れる。国立清華大学の賀陳弘学長は「オリンピック級の科学研究チームが新竹で誕生することになる」として歓迎している。