台湾北部・台北市の国立台湾大学医学院付属医院(台大病院)は、世界に先駆けて脂質降下薬の新たな効用を発見した。この研究で、紅麹などの天然物から抽出したスタチン系脂質降下薬を長期的に服用している患者が、敗血症を起こした場合の死亡率が28%低下するということがわかった。
研究チームのメンバーである台大急診医学部(救命救急センター)の李建璋・主治医師(主治医)は2日に取材を受けた際、台湾における敗血症罹患率は、10万分の700、毎年数十万の敗血症患者がICU(集中治療室)に送られ、応急手当を受けており、死亡率は20%にも達すると説明した。
李主治医師によると、研究チームは2002年から2012年までの医療データベースから5万人の敗血症患者の資料を分析した。異なるメーカーの同じ種類の薬剤の敗血症予防効果を研究したところ、敗血症を起こす前、天然物から抽出したスタチン系脂質降下薬を長期的に服用していた患者は、服用していない患者より90日間の死亡率が28%低くなることが分かったという。
李主治医師によると、スタチン系薬剤は、臨床では脂質降下薬の中で初期段階に使用される薬物に属し、紅麹などの天然物から抽出した薬品「シンバスタチン」と人工的に合成した薬品「ロスバスタチン」二種類ある。敗血症予防の面では天然由来の薬品の方が効果が高いという。それは、天然由来のものは、天然のカビから抽出したもので、もともと細菌を抑制する効果があるためだ。しかし、脂質降下という面からみると、人工的に合成した薬品の方が効果的だということが分った。
今回の研究は、世界で初めて「シンバスタチン」に敗血症の死亡率を低下する効果があるということを証明した。関連の研究は4月上旬に欧州集中治療医学会(ESICM)の最優秀抄録に選ばれ、英国国際麻酔雑誌(British Journal of Anesthesia)に掲載される。