中華民国政府は、1999年9月21日の台湾大震災で得た教訓を生かすため、9月21日を「国家防災日」と定め、全国で防災演習を行っている。今年は21日午前9時21分に、台湾中部・彰化県にある彰化断層で大規模な地震が発生し、且つ9時45分に台湾北東沖を震源とする地震により津波が発生したとの想定で、台湾各地で演習を行う。
中央政府が行う演習は合計12項目ある。そのうち1つは、セルブロードキャストサービス(CBS)と呼ばれる災害警報システムの実施。21日午前9時21分に強い地震が発生したという想定で、台湾のすべての携帯キャリアを通して、第4世代移動通信システム(4G)端末を利用するユーザーに災害情報を配信する。あらゆる4G端末ユーザーは、この警報を通じて災害情報及びその後の避難訓練の内容について知ることができる。但し、国民の混乱と誤解を招くのを避けるため、地震の規模や震度などは含まない。
また、一部の地域については、地震のあとに津波が発生したという想定で、CBSによる津波警報を配信する。例えば台湾中南部・嘉義市では、21日午前10時に市内にある13か所で同時に津波の緊急警報放送を行う。但し、通行人や車両の規制、避難誘導などは行わないとしている。緊急警報放送は、サイレンを5秒鳴らし、5秒停止し、再び5秒鳴らす。この合計15秒後に、音声放送により、津波警報の演習であること、通行人や車両の規制や非難誘導は行わないなどの内容を2回繰り返す。10時10分に90秒のサイレンを1回鳴らし、警報解除を知らせる。
また、交通部中央気象局(日本の気象庁に相当)による緊急地震速報訓練に合わせ、全国の小学校、中学校、高校では地震を想定した避難訓練を行う。さらに、台湾北部の台北市、桃園市、台湾南部の高雄市などでは、台湾高速鉄道(新幹線)、台湾鉄路(在来線)、メトロ(MRT)の各車両及び各駅構内にて、地震の発生を想定した避難指示と国家防災日の情報などを伝える。
このほか、今年初の試みとして、21日午前9時59分から10時01分にかけての2分間、ケーブルテレビのチャンネルを、台湾の公共テレビチャンネルである「公共電視台(PTS、13チャンネル)」に切り替え、災害情報を放送する。内政部によるとこれは、全国レベルの災害が発生する直前、あるいは発生後、政府は直ちに災害情報を「公共電視台」に送るというシステム。各ケーブルテレビ会社は、視聴者が見ているテレビのチャンネルを、「公共電視台」のチャンネル13に強制的に切り替える。チャンネルが切り替わった後、視聴者はこのままチャンネル13を視聴するか、別のチャンネルに切り替えるか選択することができる。これは、国民に対して緊急に災害情報を伝える一方で、国民が自由にテレビ番組を視聴できる権利を奪わないため。但し、離島の金門島と馬祖島はケーブルテレビのデジタル化が完了していないため対象外となる。
内政部では、ケーブルテレビに加入している世帯は、あらかじめテレビの電源を入れ、視聴しているチャンネルが公共電視台に自動的に切り替わるかどうか、そして演習が行われている2分間に、リモコンを使って任意のチャンネルに切り替えることができるかどうかを確認して欲しいと呼びかけている。