2024/10/17

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経済

国立成功大学、ランの花のゲノム塩基配列を解読

2017/09/22
台湾南部・台南市にある国立成功大学は21日、ラン科の中で最も早い時期に分岐した系統の1つ、ヤクシマラン属(Apostasia)のゲノム塩基配列を解読したと発表した。今後、ランの育種に大きく役立つと見られている。写真左から2人目は国立成功大学の蘇慧貞校長(=学長)。(中央社)
台湾南部・台南市にある国立成功大学は21日、ラン科の中で最も早い時期に分岐した系統の1つ、ヤクシマラン属(Apostasia)のゲノム塩基配列を解読したと発表した。
 
国立成功大学の蘇慧貞校長(=学長)と同大学の研究チームは21日午後、記者会見を開催し、中国大陸の南東部に生息するヤクシマラン属Apostasia shenzhenica(中国語名は擬蘭)のゲノム塩基配列を解読したことを明らかにした。この研究には、成功大学熱帯植物科研究所の蔡文杰副教授、成功大学蘭花研究センターの蕭郁芸助理研究員、成功大学生命科学系(=学科)の張松彬副教授など台湾の研究者6名のほか、中国大陸、ベルギー、日本などの17の研究機関が共同で取り組んだ。
 
発表したのは「The Apostasia genome and the evolution of orchids(ヤクシマランのゲノムとランの進化)」と題する論文。21日発売の科学誌『Nature』に掲載された。この中で、成功大学の研究チームのメンバーの国籍は「台湾」と紹介されている。これまで台湾の研究成果が海外の学術誌に掲載される際、国籍は「台湾」ではなく「台北」と書かれることが多かった。今回「台湾」と記載されたことは、この研究分野での台湾の功績が極めて重視されたものと考えることができる。
 
ヤクシマラン属Apostasia shenzhenicaは現存するラン科の植物では最も古く、7,700万年前には出現していたと考えられている。その外観は一般のランの花とかなり違い、変形した花弁(唇弁)を持たず、ずい柱が発達していない。また、花粉塊がなく、花粉は顆粒状である。
 
さらに、ヤクシマラン属Apostasia shenzhenicaは土の中に根を張ることしかできない。現在よく見られるランの花は樹木や岩の表面などに根を張り付かせて生長する。これは、空気中の養分を吸収し、水分を蓄えることができる気根と呼ばれる根を持つためである。これもゲノムの変化の影響を受けたものであり、ヤクシマラン属Apostasia shenzhenicaの全ゲノムを解析することは、こうしたランの進化史の解明に役立つと見られている。
 
成功大学熱帯植物科研究所の蔡文杰副教授によると、この研究には3年余りの時間が費やされた。2年前には台湾原種の「小蘭嶼姫胡蝶蘭(ヒメコチョウラン)」のゲノム塩基配列を解読した。今回発表したものは、中国大陸原種のランであり、2万1,000個余りのゲノム塩基配列を解読した上で、その他のランとゲノム配列を比較解析した。
 
その結果、ランには特定のMADSボックス遺伝子ファミリーがあり、これが花弁、ずい柱、がく片、花粉などの進化に影響を与えていることが分かった。蔡文杰副教授によると、今回の研究の結果、世界初となるランのゲノムデータベースを構築することができた。このため、今後は運を天に任せるのではなく、より的確に花の育種を行うことができるようになる。栽培においても、あれこれ模索するのではなく、ゲノムに応じてそれぞれのランの品種に合った栽培方法を知ることが可能になる。
 
成功大学蘭花研究センターの蕭郁芸助理研究員も、今後はランの花弁の形を変えるような育種だけでなく、極端な気候にも適応できる新品種の開発などにも役立てることができると説明した。
 

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