2024/05/08

Taiwan Today

経済

BBSサイトPTT開設者、PTTにはFBに負けぬ価値あり

2018/01/26
1976年生まれの杜奕瑾さん(写真)は、ネットユーザーから「創世神」と呼ばれる。1995年、大学在学中に巨大BBSサイト「PTT(批踢踢)」を立ち上げた人物だ。2017年に「台湾人工智慧実験室(Taiwan AI Labs)」を立ち上げた。(中央社)
ネットユーザーから「創世神」と呼ばれる男がいる。1976年生まれの杜奕瑾さんだ。1995年、大学在学中に巨大BBSサイト「PTT(Professional Technology Temple、中国語では批踢踢)」を立ち上げた。PTTは現在でも1日延べ50万人以上がログインする。2014年3月に「ひまわり学生運動」と呼ばれる社会運動が発生した際には、1時間当たりの同時ログイン数が過去最多の延べ10万人を超えた。
 
杜奕瑾さんは大学3年生のとき、「蕃薯藤(yam)」の創設者である陳正然さんや友人らと協力し、当時台湾初の検索エンジンだった「蕃薯藤」をポータルサイトへと転換させた。その活躍はアメリカ国立衛生研究所(NIH)の目に留まり、同研究所を経て、その後は米マイクロソフト社に入社。同社の人工知能(AI)発部門でアジア地域(中国大陸、日本、台湾、香港、韓国)研究ディレクターを務めた。2017年にマイクロソフト社を退職。台湾に戻り、官民提携により台湾製AIの開発に取り組む「台湾人工智慧実験室(Taiwan AI Labs)」を立ち上げたばかりだ。
 
杜奕瑾さんは国立台湾大学(台湾北部・台北市)資訊工程系(=情報工学科)2年生のとき、大学の学生寮に設置したIntel486のCPUを搭載したパソコン1台を使い、Linuxとオープンソースソフトウェアを利用して電子掲示板システム(BBS)「批踢踢実業坊(PTT)」を立ち上げた。現在では毎日のように、同時ログイン数が延べ10万人を超える巨大BBSとなっている。さまざまなテーマのカテゴリが存在し、台湾で最も利用者が多いインターネットコミュニティの一つ。また「郷民文化」と呼ばれる台湾独特のBBS文化を生み出しているのもPTTの特徴だ。
 
インターネットの普及に伴い、近年はフェイスブック、インスタグラム、Dcard(台湾最大の匿名SNS)といったSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が増えている。こうした中、PTTはいまだに会社化せず、当然ながら株式の店頭登録や上場も行っていない。早めに会社化しなかったことに後悔はないのだろうか?
 
その問いに対して杜奕瑾さんは「惜しいことをしたとは思っていない。金銭を稼ぐことが重要だと思ったことなど一度もないからだ」と淡々と答えた。杜奕瑾さんはさらに「重要なのは、何を自分のKPI(重要業績評価指標)とするかだろう」と続けた。
 
「それに、PTTがフェイスブックに負けるとは思わない。多くの人がPTTの会社化に大きな幻想を抱いているだけだ」と語る杜奕瑾さん。PTTが持つ最大の価値は、会社化後の資産価値などではなく、誰にもコントロールされずに言論の自由が守られ、しかもその空間が非常に良く運営されていることだと話す。
 
杜奕瑾さんによると、いまでも多くのSNSはいとも簡単に誰かのコントロールを受けている。例えばフェイスブックは平時からいつも攻撃を受けており、フェイスブックページの開設、スパム広告などを利用し、特定の傾向を持つ情報ばかりを出現させている。動画投稿サイトYoutubeでも同じことが言える。SNSや情報プラットフォームをこうした汚染から守ることは非常に難しいことだ。しかし、少なくともPTTについては、これが可能だと杜奕瑾さんは胸を張る。
 
PTTの開設から20年以上が経った現在も、大部分のシステムは台湾大学資訊工程系の在学生や卒業生がメンテナンスを行っている。いかなる特定の組織にも所属していないにも関わらず、完全なサイト管理ができており、自由な討論空間は様々なテーマのスレッドを生み続けている。
 
「PTTはすでにただのプラットフォームではなく、ある特定の個人の資産でもない。それは、何かアイディアがあれば一緒に作って行こうという、一つの精神なのだ。しかも、基本的に政治の力が介入することがない。書き込みが削除されるなど、どちらか一方の勢力が強いということもありえない。だからPTTの言論に影響を与えることはできない。それこそがPTTにとって最大の価値なのだ」と杜奕瑾さんは笑う。
 
将来誕生するであろう人工知能(AI)を応用したSNSとは、一体どんなものになるだろうか。「それは絶対に、現在あるフェイスブックやLINE、PTTのようなものとは違うだろう。将来どのようなものが誕生するか、ぜひみんなでよく考えて、そして試してみて欲しい」―杜奕瑾さんはそう呼びかける。
 
杜奕瑾さんは昨年、アメリカから台湾に帰国し、「台湾人工智慧実験室(Taiwan AI Labs)」を立ち上げた。AIは高付加価値を持ち、高い利益を生む産業を台湾で発展させるための契機になる。そのためにはAI産業を育てる環境を作り上げ、海外へ流出した人材を台湾に呼び戻さなければならない。杜奕瑾さんの目標は、台湾を世界におけるAIアイランドにすることだ。
 
AIを一言で説明するとしたら、どういうものだろうか。「簡単に言えば過去に誰かが経験してきたことを、すべて学び取ろうとするもの。それがAIだ」と杜奕瑾さんは言う。
 

ランキング

新着