ビデオアートを手掛ける台湾のアーティスト、余政達(Yu Cheng-Ta/ユ・チェンタ)さんが9月、仏パリ4区にある総合文化施設ポンピドゥー・センターの招きを受け、モキュメンタリー(mockumentary)の上映、パフォーマンス、映像作品の発表と座談会などのイベントを行う。モキュメンタリーとは、架空の人物や団体、虚構の事件や出来事を、ドキュメンタリー風に表現する映像作品のこと。
余政達さんは1983年生まれ。過去に、イタリアで開催された第53回ヴェネチアビエンナーレ美術展に台湾を代表して参加したことがある。わざとリアルな情景を作り出してロケ地とし、いわゆる「生活劇場」の概念で、舞台劇のリハーサル過程とプロの演出を運用し、まるで「リアリティ番組」を撮影しているような雰囲気のビデオ―アートを作ることを得意とする。
ポンピドゥー・センターは9月13日、余政達さんの作品『Tell me what you want』を上映する。この作品は『Malate』、『David』、『Joara』、『The Shop』という4つのモキュメンタリーから成るオムニバス作品で、余政達さんが1年半かけて撮影した。
このイベントでは作品の上映だけでなく、余政達さんとフランスの舞台役者Manuel Blancさんのコラボによる30分間のパフォーマンスと朗読も行われる。
ポンピドゥー・センターはこのほか、9月27日に余政達さんとシンガポールのアーティストである黄漢明(Ming Wong)さんの合作映像作品『西瓜縁(WATERMELON SISTERS)』を上映する。作品の中で二人は女性に扮し、ラップやダンスといった大衆流行文化の要素を使って作品の形式言語を構成している。ジェンダー・アイデンティティについても触れた内容になっている。
ポンピドゥー・センターでは9月に「Prospectif Cinema」と称するプログラムで、クイア(同性愛者などを含むセクシャルマイノリティーの総称)をさまざまなアプローチによって表現するという試みを行う。『西瓜縁』はそこで上映される7作品の一つに選ばれた。