2024/06/24

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チンギス・カンが月に?台湾の女性映画監督が米国で注目浴びる

2018/12/20
台湾の女性映画監督、楊斯茜さんは短編映画でチンギス・カンを月に送り込んだ。アイデンティティを探り、歴史をひっくり返す大胆なその作品はハリウッドで注目を集めている。左の写真は楊斯茜さん。右は『成吉思汗征服月球』の一幕で、左からジェームズ・ホン、ケイリー=ヒロユキ・タガワ。(楊斯茜さん提供、中央社)
米ハリウッドにおける女性の権利意識が台頭し、ダイバーシティ(多様性)が主張される中、台湾の女性映画監督である楊斯茜(Kerry Yang)さんがアイデンティティを探り、歴史をひっくり返す大胆な作品で注目を集めている。
 
楊斯茜さんは30歳。米シカゴ芸術大学映画学科卒業、南カリフォルニア大学では映画に関する修士も取得した。学校を離れて2年、楊さんは自身の修了制作である短編映画『成吉思汗征服月球(Genghis Khan Conquers the Moon、チンギス・カンが月を征服)』で30あまりの国際映画コンクールに入選した。
 
歴史上の人物でユーラシアを征服したチンギス・カンが月に降り立ち、宇宙飛行士のアームストロング船長とけんかをするという荒唐無稽なストーリーこそ、この若い女性監督が愛する表現方法で、楊さんは、「現実から離れ、観客を別の宇宙に誘うのが好きだ」と話す。
 
大胆な想像力とリアルな視覚効果が魅力の17分間の作品がさらに観客を引き付けるのはそのキャスト。チンギス・カンを演じるケイリー=ヒロユキ・タガワ、魔法使い役のジェームズ・ホンはいずれもベテラン俳優で、米国人にとって代表的な「アジア人の顔」。こうした有名俳優が学生の修了制作に無償で出演した。楊さんによると、彼らはステレオタイプのアジア人役にあきあきしている。『成吉思汗征服月球』のシナリオでは、米国映画の中では悪役と決まっているチンギス・カンを主人公にしたばかりでなく、クライマックスではさらにその優れた知恵や深い心の中をのぞかせるようになっており、これら有名俳優はノーギャラでも出演を望んだのだという。
 
楊斯茜さんにとって、歴史の否定は芸術の手法であり、自らのアイデンティティを探る方法でもある。準備中の初長編作品、『嗜血芳齢』は中華民族の女の子が米国西部のカウボーイの世界に飛び込み、西洋の吸血鬼と戦う物語だ。楊さんは想像で生み出した宇宙に理想の世界を追い求めている。
 
映画のジャンルに基づいて歴史にファンタジーを与える。これは楊さんの芸術理念の中心である「みなが問えない問題を問うこと」に通じる。13歳で米国に留学し、東西の文化の衝撃を受けた楊さんが「アウトサイダー」として見つけた視点でもある。楊さんは、「一歩下がって、メインストリームに批判的な目を向けてみてはじめて自分自身の声を見つけることが出来る」と話している。シナリオはすでに完成しているという『魔幻太魯閣』の主人公もやはり女の子。時空を越えて、日本の兵士と米国人捕虜に関わっていく物語だという。
 
 

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