蔡英文総統は2日午後、中国の「台湾同胞に告げる書」発表40周年式典で習近平国家主席が発表した談話に関し、わが国の政府の立場を説明した。談話の全文は以下の通り。
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きょう(2日)午前、中国の習近平国家主席が、いわゆる「台湾同胞に告げる書」40周年記念式典で談話を発表し、「一国二制度」による台湾統一の具体案を模索する考えを示した。中華民国の総統として、私はここで我々の立場を説明したい。
まず、我々はいまだかつて「92コンセンサス」を受け入れたことがないことを強調しなければならない。その根本的理由は、北京当局が定義した「92コンセンサス」が、つまりは「一つの中国」、「一国二制度」であるからだ。きょうの習近平氏の談話は、我々の懸念が正しかったことを証明した。ここで私は重ねて主張する。台湾は断固として「一国二制度」を受け入れない。台湾の民意の圧倒的多数は「一国二制度」に強く反対しており、これは「台湾コンセンサス」である。
次に、我々は腰を据えて話し合いたいと考えている。しかし、民主国家として、台湾海峡両岸間の政治的協議や交渉は、台湾住民からその権限を委ねられ、その監視を受けなければならない。なおかつ台湾海峡両岸の政府が、政府対政府の形式で行うものでなければならない。この原則の下、いかなる人物や団体も、台湾住民を代表して政治的な話し合いを行う権利を有さない。
台湾海峡両岸関係の発展は、私が元日に行った「新年の談話」でも明確に説明した通りだ。つまり第一に、中国は中華民国台湾が存在するという事実を直視すべきであり、台湾住民が共同で確立した民主国家体制を否定してはならない。第二に、台湾に住む2,300万人の住民の自由と民主主義に対するこだわりを尊重すべきであり、対立を煽り、誘惑するなどの方法によって台湾住民の選択に介入してはならない。第三に、平和で対等な方法によって双方間に存在する見解の違いを処理すべきであり、圧力や威嚇によって台湾人を屈服させようと企んではいけない。第四に、政府あるいは政府によって権利を授与された公権力を持った機関同士が腰を据えて話し合うべきであり、台湾住民からの権限委託や監視を受けずに行った政治的協議は、いずれも「民主的協議」と呼ぶに値しない。これは台湾の立場であり、民主主義の立場でもある。
我々は「民主主義を強化する」及び「国家の安全保障を強化する」という基礎の上で、秩序を持った、健康的な台湾海峡両岸交流を推し進めたいと考えている。台湾には台湾海峡両岸交流のための3つのセーフティーネットを築く必要がある。それはつまり、民生の安定、情報セキュリティ、制度化された民主的な監視メカニズムである。
台湾海峡両岸の経済・貿易は相互利益と共存共栄であるべきだ。しかし、我々は北京の「中国の国利優先」を核心とし、経済的利益をちらつかせて台湾の技術、資本、人材を中国に引き込もうとする、経済による統一工作に反対する。これに対して我々は「壮大台湾(=台湾を強大にする)」計画に含まれる各種戦略や措置を全力で推進し、台湾を主体とし、台湾を優先する経済発展路線を強化している。
過去2年間、台湾はこの地域の一員としての義務を果たし、台湾海峡両岸及びこの地域の平和と安定のために積極的に貢献してきた。我々は相手を挑発することなく、原則を守り続けてきた。中国からのさまざまな圧力にさらされながらも、台湾海峡両岸関係に関する我々の基本的立場と約束を放棄することはなかった。北京当局は、大国ならではの態度と責任を持つべきである。中国が変わることができるか、信頼できるパートナーとなりうるかどうかを国際社会も見守っている。私が「新年の談話」で提示した「4つのすべき」は、台湾海峡両岸が正しい方向へ向かって発展できるかどうかの、最も基本的で、最も重要な鍵を握るものである。
(習近平国家主席が言及した)いわゆる「心霊契合(心を通わせる)」は、互いに尊重し、理解した上で、台湾海峡両岸の政府が住民の幸福と利益に関わる問題に実務的に取り組む上で、成り立つものである。例えば目下の急務となっているアフリカ豚コレラの感染拡大問題や、海外の企業に対して台湾に関する表記を改めるよう圧力をかけるような行為は、決して「心霊契合」の状態をもたらさない。中華民国の国交樹立国を金銭で奪い取ることも、「心霊契合」にはつながらない。戦闘機や戦艦を台湾の空海域に出没させることも、とうてい「心霊契合」をもたらすものではない。
最後に、(昨年11月下旬に台湾で行われた)統一地方選挙の結果は、台湾の基層の世論が主権を放棄しようとしていることを意味しているわけではなく、台湾の人々が台湾の主体性の問題において譲歩したわけでもないことを重ねて申し伝えたい。
民主主義の価値は、台湾の住民が大切にしている価値観であり生活様式である。我々は中国に対して、勇気をもって民主主義への一歩を踏み出すよう呼びかける。そうしてこそ、台湾人の考え方や強い思いを本当に理解することができるからだ。