立法院(国会)本会議で10日、「文化基本法」が可決・成立した。「文化基本法」は文化行政を推進する上での上位法令。内容は文化的多様性の発展の保障、国民の文化的権利とそれに対する国の義務明確化、文化行政の施政方針策定、文化を通じたガバナンス体系の再構築、それに加えて文化的影響への評価も導入されており、文化を通じたガバナンスという視野を国の発展と融合することで文化力を深め、「文化台湾」を実現するものとなっている。
「文化基本法」の成立は世界とのリンクも意味しており、国連による「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」、「文化的多様性に関する世界宣言」、そして「文化的表現の多様性の保護及び促進に関する条約」の内容も条文に盛り込まれている。
文化を通じたガバナンスに関する条文は、文化部には4年に1度、全国文化会議を開いて全国の文化発展業務を話し合うことを義務付けた。また、地方自治体に対しても、人々による文化政策参与を可能にする常設性の仕組みを整え、4年に1度は地方文化発展会議を開催して各地での文化発展計画を定めるよう求めている。
また、文化面での充実した予算を保障するため、同基本法では各レベルの政府が文化予算を拡大することに加え、中央政府は文化発展基金を立ち上げて予算管理と運用の柔軟性を広げることを義務付けた。さらに文化予算の効率を高めるため、各省庁の文化支出に属する部分については、その資源配分と推進戦略を文化会報(会議)での調整項目に加えることが決められた。
同基本法の条文では自由平等の原則が明文化された以外に、国は文化的公民権の、メディアへのアクセス権及び使用権、言語権、知的財産権、政策参与権などの面での実践を保障すべきと明確に定め、中央政府と地方自治体に文化行政のための基本的な施政方針に対する責任を課した。具体的には文化の保存、文化教育、博物館及び図書館、コミュニティ建設、文化スペース、文化経済、文化観光、文化科学技術、芸術・文化活動従事者の権利保障、文化発信政策など。
条文ではまた国に対して、文化資産の全面調査の定期的な実施と、文化資産の保護、修復、再生と防災に関する専門的な支援と技術サポートを提供するよう義務付けた。必要な場合は法律に則って補助を与えることも定めた。
芸術・文化活動従事者の働く権利を守ることも「文化基本法」の核心となる精神で、条文では芸術・文化活動従事者の生存権と働く権利は守らなければならないと明記されている。国は芸術・文化活動従事者の働く権利を守らねばならないほか、芸術や文化面での創作や保存に向けて大きく貢献した人たちは表彰し、必要なサポートを行わなければならない。
「文化基本法」ではまた、国が文化経済の促進と振興に努め、文化を以って力強い経済発展の基礎とするよう求めた。国はさらに関連の奨励、補助、投資、税制面での優遇措置、及びその他の振興政策と法規を定めなければならない。
文化の発信政策についても「文化基本法」は国が関連の政策を策定し、情報通信技術を活用して台湾の文化的デジタルコンテンツの充実を鼓舞していくよう求めている。多元的な文化コンテンツを提供すると共に多元的な意見の発表を保障、さらに国民の知る権利を守っていくため、国は公共メディア体系を整備し、公共メディアとしてのサービスを提供させる必要がある。一方、公共メディアの発展は全国民の利益と社会的責任に関わってくることから、公共メディアには公共性と自主性が確保されなければならない。「文化基本法」では公共メディアの自主性を保障すると共に、国はそのための予算を編成し、安定的かつ十分な財源を提供することで公共メディアの発展と健全な文化の発信に関する政策の推進を図ることになっている。
さらに同法によると、法人もしくは団体が政府機関及び政府系の団体、公立学校、公営事業の補助を受けて文化や芸術に関する品物を購入する場合、「政府採購法(調達法)」の規制対象とならない。しかし、補助を提供した側からの監督は受けなければならない。その原則と適用範囲、監督管理の方法は文化部が定める。
「文化基本法」第8条は政府に対し、十分な文化予算の保障と「文化発展基金」の創設を義務付けている。文化部はこれについて、法律に基づいて「文化発展基金」を立ち上げると共に、新たに「文化発展基金管理及び運営方法」を定め、同基金の財源と用途を明確にすると説明した。「文化発展基金」は文化の発展、及び公共メディアの独立経営などに用いられることになる予定。文化部では、同基金の設立には文化予算の拡大を可能にする意義があるほか、基金自体の自主管理を実現し、政府予算の増減によって影響されないことがより重要だと指摘している。同基金が重要な文化事業をサポートすることで、こうした事業のより安定した発展が可能になる。例えば公共メディアの場合、文化発展基金が経費の源となることで、メディアの公共性と独立性が外部の影響を受けずに済むことになる。
文化部はまた、「文化基本法」の成立により今後は同法に基づき、「文化芸術奨励条例」や「文化創意産業発展法」、「博物館法」、「文化資産保存法」の検討や改正などに着手するとしている。