科技部と内政部(いずれも日本の省レベル)によるサポートを受け、台湾の最高学術研究機関・中央研究院の研究グループが長期にわたる観測を行った結果、大屯火山と亀山島は活火山だと判断した。大屯山は台湾北部にある陽明山国家公園内の山。亀山島は台湾北東部・宜蘭県の東、太平洋に浮かぶ島。
経済部(日本の経産省に相当)中央地質調査所は2004年から火山観測を行っていたが、科技部がその後、陽明山国家公園管理処菁山自然センターに「大屯火山観測站(Taiwan Volcano Observatory at Tatun, TVO)」を設置、中央研究院の林正洪研究員と研究グループは2011年からそこで観測を続けてきた。そして地震波のS波のシャドーゾーンと、P波の到達が遅れるという2つの重要なデータから、台湾北部の地殻にマグマ溜りがあることを突き止めた。範囲は台北市の約1/4の面積にあたるという。一方、亀山島にあるマグマ溜りは大屯火山の2.5倍に達し、仮に亀山島で噴火が起きたならば島の土砂が崩落し、それによる小規模な津波が、極めて平坦な宜蘭平原(宜蘭県の平野)を襲う可能性があるという。
大屯火山観測ネットワークでは過去3年間に、興味深く特殊な火山活動を数多く確認している。例えば大油坑地区で観測された周期的な地震活動。平均して約18分間隔で繰り返される地震活動で、始まると数十時間続くこともある。これは休眠中の火山において世界で初めて観測された、動物の心臓の「鼓動」に似た現象だという。
大屯山では毎月150回前後の地震が観測されている。火山の「鼓動」は毎日70回から80回だが常にあるわけではない。観測されたのはこれまでに三度。一度起きると1日から2日間程度続く。火山の「鼓動」を引き起こすのは停止した人間の心臓に加える電気ショックにやや似ており、例えば台湾東部の花蓮県で発生した地震波が台北に伝わり、周期的な地震を誘発する。大屯火山は大台北エリア(台湾北部の台北市・新北市・基隆市)の都市部に極めて近く、最高峰の七星山は台北市にある超高層ビル・台北101から15キロメートルも離れていない。
「大屯火山観測站」ではリアルタイムの火山観測システムを複数備えており、地球化学分野の噴気孔、土壌ガス観測、温泉観測、水質観測などで合計18カ所。地球物理の面でのGPS(衛星測位システム)、低周波音、傾斜計、地温で24カ所。さらに地震計は40カ所に及ぶ。いったん大量の異常現象が見つかれば、データは同時に中央気象局に伝えられる。そして同局が火山の動きと確認した場合、ただちに中央政府に報告されて対応センターが設置されることになる。
国家災害防救科技センターによれば、火山の噴火は重大な情報であり、将来的には基準を設けて避難や注意を呼びかけるメッセージを出来るだけ多くのシステムを通じて発信できるようにする。一般の人々が携帯電話の会話アプリ、LINEを通じて火山警報を受け取れるようにするほか、国家レベルの警報メッセージも送って人々に注意を促すという。