2024/09/17

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1世紀近くの歴史持つ台湾産紅茶、新品種で若い客層取り込み狙う

2019/07/04
台湾の紅茶の歴史は1世紀近くに及ぶ。現在までに正式な命名を受けた台湾産の紅茶は全部で5種類ある。最新品種の「台茶23号」(写真左)はレモンや柚子のようなさっぱりとした香りがする。主に若い消費者をターゲットとして育成された品種で、新たな客層の取り込みにつながると期待している。(行政院農業委員会茶業改良場サイトより)
海外で高い評価を受けている台湾産のお茶の品種はウーロン茶だけではない。行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)茶業改良場の資料によると、台湾の紅茶の歴史は1世紀近くに及ぶ。標高600~800mの傾斜地で栽培されており、何煎でも楽しめるのが特徴だ。台湾特有の風土によって育まれた紅茶は独特の香りを持つ。これは、インドやスリランカなど標高2,000mの高山で栽培された紅茶が持つ香りと同じである。
 
台湾産の紅茶が世界に知られるようになったのは1930年代のこと。特に有名なものは、日月潭(台湾中部・南投県)のある魚池のものだった。例えば、当時最も栄えていた大稲埕迪化街(台湾北部・台北市)の茶葉業者は商品を購入する際、茶葉農家に対してサンプルを提供させ、それから購入価格を決めるのが一般的だった。しかし、魚池産の紅茶については、茶葉業者はこれらを一切求めず直接購入するほどだったという。
 
現在までに正式な命名を受けた台湾産の紅茶は全部で5種類ある。そのうち、1973年に命名された「台茶7号」と「台茶8号」、1999年の台湾大地震(9月21日発生)のあとに命名された「台茶18号(紅玉)」、2008年に育成された「台茶21号(紅韻)」の4種類は、いずれも「大葉種」の紅茶である。
 
5番目に命名された品種は、今年5月下旬に発表されたばかりの「台茶23号」である。紅茶の愛好家による投票で、別名「祁韻」と命名されたもので、唯一の「小葉種」だ。茶業改良場は今年末、茶葉農家に対して栽培を推奨する予定で、約2年後には量産、市販される見通しだという。
 
この5種類の紅茶の誕生は、台湾の紅茶産業の各発展段階を象徴するものだ。台湾では1976年まで、紅茶の対外輸出に注力していた。しかし、1976年から台湾大地震が発生する1999年までは、インドやスリランカ産の紅茶との価格競争に勝てず、台湾産紅茶の対外輸出は低迷。しかし、内需市場も打開できずにいた。転機が訪れたのは1999年のこと。台湾大地震をきっかけに、台湾の紅茶産業は大きな転身を遂げた。
 
1930年代、台湾が日本の植民統治を受けていた時代、日本人がインドからアッサム種の茶の木を台湾に植樹した。台湾ではそれ以降、紅茶が大量に生産され、海外に輸出されるようになった。戦後の1973年にはアッサム種に良く似た風味の新品種「台茶7号」と「台茶8号」の開発に成功。台湾産紅茶の輸出は1970年代に最盛期を迎えた。その輸出量は年間2~3万トンとなり、ピークには4万トンに達した。そのうち魚池産の紅茶は5,800トンを占めた。
 
しかし、その後の20数年余り、台湾産紅茶の対外輸出は低迷する。そして台湾大震災後の産業振興で生まれたのが新品種「台茶18号」、通称「紅玉」である。この新品種の誕生は、台湾の紅茶産業の起死回生につながった。台湾産の紅茶は、「高級茶」としての地位を確立した。2008年にはさらに新品種「台茶21号(通称「紅韻)」の開発に成功。大量生産をせず、品質にこだわった。魚池産のこの2種類の紅茶は現在、1台斤(=600グラム)当たり2,000~6,000台湾元(約7,000~20,000日本円)の値段で販売されている。
 
これら5種類の台湾産紅茶にはそれぞれ特徴がある。ミルクティにするなら「台茶7号」と「台茶8号」がお勧めだ。牛乳を加えて飲むのに適しており、アッサム茶の替わりになる。「台茶18号(紅玉)」はほんのりシナモンやミントの香りがするので、欧米の人々に好まれる味だ。「台茶21号(紅韻)」はフローラルの香りで、台湾人はこの香りに引き付けられてやって来る。これら4種類の「大葉種」の紅茶は、お茶の質が比較的しっかりしており、収斂性が強く、渋みもある。一方、最新品種「台茶23号(祁韻)」は「小葉種」で、レモンや柚子のようなさっぱりとした香りがする。主に若い消費者をターゲットとして育成された品種で、茶業改良場では新たな客層の取り込みにつながると期待している。
 

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