台湾と韓国のハーフの映画監督、張智瑋(Chih-Wei CHANG)さんによる初めての自主作品映画「醬狗(Jang Gae、짱개チャンケ)」が、韓国・ソウルで撮影をスタートした。張智瑋監督は、映画の主人公となるネイティブな韓国語を話す台湾の役者を探すため、韓国中を東奔西走し、ようやく、韓国の芸能界で活躍する期待の星、台湾の男性俳優、賀業文さんを見つけ出した。
張智瑋監督は、この映画の主役が、絶対に中華民国の国籍を保有していることを確認する必要があったため、オーディションではまず、パスポートをみせてもらったという。なぜここまで国籍にこだわりを持ったかというと、助成金の関連規定における役者の国籍の割合に関する規定を満たすため、そして、映画の主人公が台湾と韓国のハーフという設定だったためだ。
「醬狗」のクランクインでは、「台韓雙拼(台湾と韓国で共に奮闘する)」を掲げ、張智瑋監督が主演男優の賀業文さん、同じく主演を務める韓国女優のキム・イェウンさんと製作スタッフと一緒にお線香をあげて無事を祈る台湾式の儀式を行った。
賀業文さんは、韓国の有名ドラマ「ハッピー・レストラン家和萬事成」や「皇后の品格」に出演した経歴を持つが、今回が初めての主役となる。賀業文さんが醬狗の主人公を演じることは、かなり若い役柄に挑戦するだけでなく、ときにカッコよく、ときに不良っぽいといった様々な顔を演じ分ける難しさにも挑むこととなる。
そのほかの台湾俳優は、米テレビドラマ「LOST(ロスト)」、米アクションコメディ映画「ゲット スマート(Get Smart)」、台湾舞台劇「瘋狂電視台」などに主演したことがある、華僑俳優の于澤偉さん。
一方韓国の俳優は、主演女優のキム・イェウンさんと女優 イ・ハンナさん。
「醬狗」は、日本の映画祭、「東京フィルメックス」のサポートプログラム作品に選ばれ、台湾の文化部(日本の文部科学省に類似)の台湾映画補助金の助成も受けた。ストーリーは、張智瑋監督の生い立ちを元に、台湾と韓国のハーフとして生まれたことで、どこにいても外国人扱いされるアイデンティティの危機をテーマにしている。
映画のタイトル「醬狗」は、韓国語の「掌櫃(中国語で店主の意味)」という言葉と同じ発音で、中華圏の人々を蔑視する言葉でもある。映画の主人公はソウルで生まれ育ち、流ちょうな韓国語を話すにもかかわらず、よく韓国人から「醬狗」とからかわれる。撮影現場では、台湾と韓国両方の罵り言葉が飛び交い、興味深い撮影が展開される。
撮影は9月中旬に終了し、台湾では2020年後半に上映される予定。