グラフィックデザイン業界で20年余り活躍している米国在住の台湾人イラストレーター、蘇琦雯(Chiwen Su)さんがこのほど、米国のドール雑誌『Fashion Doll Quarterly(略称FDQ)』の特集記事で取り上げられた。蘇琦雯さんは、ドール(人形)をテーマにした手描きのイラストを得意とする。
雑誌『Fashion Doll Quarterly』の最新号は「Artist Profile」のコーナーで蘇琦雯さんへのインタビュー記事と、蘇琦雯さんが描いたイラスト6枚、それに蘇琦雯さんが趣味で集めているドールの写真6枚を掲載している。
『Fashion Doll Quarterly』は2003年創刊、年4回発行されている。昨年からは電子版に変更となった。ドール愛好家が注目するファッションやコレクションのトレンドを紹介したり、ドール業界で活躍するアーティストのストーリーを掲載したりしている。ドール愛好家をターゲットにした雑誌だ。
蘇琦雯さんは、限定版のバービー人形や、米国で活躍する台湾出身のファッションデザイナー、ジェイソン・ウー(呉季剛)さんがプロデュースしたドール「ファッションロイヤリティ(Fashion Royalty)」などからインスピレーションを得て、筆ペンやカラーインクを使い、豊富な色彩と流れるようなタッチでドールたちを描く。「ペンを握っていると、ドールたちの美しいファッションからインスピレーションを得るのです」と話す。彼女の眼に映るファッションドールたちは、強いインパクトを与える表情を持ち、強烈な個性を表現している。それはまるで、現実の世界のトップモデルやスター、身の回りに存在する個性的な女性たちのようだという。
蘇琦雯さんは2012年から各国のドールの研究を始め、現在100体ほど収集している。もともとは自分の描いた絵を『Fashion Doll Quarterly』に売り込み、ファッションドール業界とコラボする機会を模索しようと思っていたところ、同誌の編集者から逆に目を付けられ、インタビューを申し込まれた。
蘇琦雯さんは台湾で生まれ、オーストラリアの大学で学んだ。大学の外国語学科を卒業後は、シドニーの観光マーケットで手作りのグッズを販売していたこともあった。その後、アメリカに渡り、グラフィック作成ソフトの使い方を独学で学んだ。そしてグラフィックデザイナーとして独立し、欧米やアジアの顧客からの依頼を受けて、ブランドデザインを手掛けるようになった。
その後は「初心に帰り、自分の描きたいものを描こう」と決めた蘇琦雯さん。最近は、ずっと好きだったドールをモデルに手描きで絵を描きながら、幼いころの憧れだった「ドールの夢」を追いかけている。48歳になったいまでも、「芸術の創作に年齢や素材は関係ない。どんな年齢になっても、夢を追いかけることはできる」と信じている。