中央感染症指揮センター(新型肺炎対策本部に相当)の指揮官を務める衛生福利部(日本の厚労省に類似)の陳時中部長(大臣)が物資の買い占めなどについて、「パニックになる理由は無い」と述べて冷静な購買行動を呼びかけた。新型コロナウイルスの感染が広がる中、各地のスーパーマーケットで一部生活用品を人々が大量に買い込む動きが伝えられている。陳衛生福利部長は19日、台湾で感染する人は少なく、海外における感染者の密度と比べれば台湾に「パニックにならねばならない理由は無い」と強調した。
陳衛生福利部長は、国際的な貨物輸送が維持されているほか、外国からやって来る団体旅行は相対的に減っており人口が大きく増えたわけでもないと指摘、物資はもとからあるので過度に争って買う必要は無いとの見方を示した。陳部長はまた、買いだめは法律が許さない行為だとした上で、市民が競って買い漁れば物資はいくらあっても足りないが、節度をもって使えば間違いなく残り、必ず足りると訴えた。
陳部長はさらに、新型コロナウイルスの感染者が増える中、防疫と医療関係者が受けるプレッシャーは非常に大きい一方で、社会へのプレッシャーはそこまで大きくはないはずだとし、現在は海外からのウイルスの侵入と台湾での市中感染の防止に努めているところだと説明。かりに市中感染が広がれば事態は深刻化し、手の打ちようが無くなると述べ、この2週間、防疫に全力で取り組む考えを示した。
一方、行政院農業委員会(日本の農水省に相当)と経済部(日本の経産省に相当)は19日、大手量販店の「家楽福」(Carrefour)、「愛買」(a-mart)、「大潤発」(RT-MART)、スーパーマーケットの「全聯福利中心」(PX-mart)、「楓康」(Funcom Supermarket)と、いかにして生活物資や農産物の安定した供給を実現するかを協議した。
「家楽福」の蔡小真総監によると、今回の販売規模は中元節(旧暦7月15日。今年は9月2日)のそれと等しいが在庫には余裕がある。ただ、短期間に大勢の消費者が購入したため商品の補充が間に合わず、「棚が空っぽ」の状態になっているだけだという。また、行政院農業委員会の陳駿季副主任委員によれば、白米は90万5,000トンの備蓄があり、6カ月から9カ月は供給出来る。さらに5月には一期作の90万トンが収穫できる見通しで、白米の供給には全く問題が無い。米を買えないと言う消費者の意見については、米の取り扱い業者及びスーパーマーケットと連携し、出来る限り迅速に白米をスーパーマーケットに提供できるよう調整する。野菜も同様。さらに缶詰用のさばについても、各地の漁会(漁協)など、並びに食品メーカーと連携し、生産に必要な原料を安定的に供給する。また豚肉についても、すでに3万頭あまりの豚の食肉処理を終え、冷凍保存しているという。
経済部の王美花政務次長(副大臣)は、即席めんやトイレットペーパーの需要が4倍から5倍に増えてはいるが、トイレットペーパー16万トンの生産が可能で、その原料も6月末まで供給出来ることを確認済みだと説明した。メーカーでは勤務体制を調整して増産する予定だが値上げはしない。即席めんの生産と供給も問題ないという。
一方、「全聯福利中心」の蔡篤昌総経理(社長)は、同社では中元節に相当するレベルで在庫を3倍から4倍に増やすほか、一部のものは10倍にして消費者のニーズに応えていくと強調、消費者に向けて、政府と流通業者を信頼して共に困難を乗り越えようと呼びかけた。