行政院(=内閣)は5日午前、「紓困振興方案—看好台湾 回流資金持続加碼」と題する記者会見を開催した、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、米国や日本など一部の国は、生産拠点が集中する中国から撤退し、国内回帰する企業への支援を検討するようになっている。台湾は米中貿易摩擦に対応するため、昨年から台湾企業の回帰投資を誘致するプロジェクトを展開していた。新型コロナウイルスの感染拡大もあいまって、回帰投資は想定より早く進み、今年の5月20日(正副総統就任式典が行われる日)までに累計1兆台湾元(約3.6兆日本円)を突破する可能性がある。これにより台湾で創出される雇用機会は8万人余りと見込まれる。
この1兆台湾元のうち、昨年の投資実行額は2,000億台湾元以上(約7,110億日本円)だった。今年は3,253億台湾元(約1.1億日本円)に達する見込みで、これは通年の国内総生産(GDP)19兆台湾元(約67兆日本円)の1.7%を占める。つまり、台湾の経済成長率を下支えする大きな要素となることが期待できる。
今年は新型コロナウイルスの影響を受け、観光及びサービス業が最も大きな影響を受けている。しかし、少なくとも製造業は経済成長を押し上げる要因の一つとなることが期待されている。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、企業ではテレワークが進み、学校ではインターネット回線を使ったオンライン授業が増え、それに関連する産業は売上げが伸びている。昨年の台湾回帰投資の大部分を占めていたノートブック型PC、サーバー、インターネット通信等は、今年も成長が期待できる。一方、自動車部品、機械、工作機械などは需要の落ち込みにより、業績悪化が続くと見られる。
また、海外からの資金還流については、昨年8月15日に財政部(日本の財務省に相当)が「境外資金回台方案(=海外から台湾への資金還流計画)」を実施して以来、現在までの資金還流申請額が875億台湾元(約3,112億日本円)に達している。そのうち実際に行われたのは764億台湾元(約2,717億日本円)。昨年スタートしたときは様子見の傾向があったが、その後は毎月一定水準の資金還流が行われ、今年8月には目標の1,300億台湾元(約4,623億日本円)に達する見込みだ。
昨年から海外進出していた台湾企業の回帰が進み、これに伴って外資の対台湾投資も戻ってきた。今年第1四半期、海外からの対台湾投資は実行ベースで726億台湾元(約2,580億日本円)に達し、対昨年同期比136%の増加となった。海外の大手企業が、台湾企業と新たなプロジェクトや研究・開発などについてオファーするようになっており、来年にはその成果が順次出ると見られている。
なお、今年第1四半期(1~3月)は台湾の経済成長率が1.54%に達し、引き続きアジア四小龍(台湾、韓国、香港、シンガポール)のトップとなった。失業率は対昨年同期比0.04ポイントの上昇にとどまった。