2024/05/08

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政治

外貌醜状で働けなくなった人への給付金、労働部が男女間格差の是正へ

2020/06/05
台湾の「労工保険」のうち、けがや病気によって外貌醜状の障害を負った被保険者に対する「労保失能給付」は男性より女性に手厚い。労働部は今後見直しを進めることにしている。写真は労働部労工保険局。(自由時報より)
台湾の「労工保険」(労災・雇用保険に相当)には、被保険者がけがや病気で働けなくなった場合の「労保失能給付」(給付金)がある。これに関する規定によれば、そのうち一時金の対象に含まれる頭部や顔面、頸部の「醜形」(外貌醜状)とは、まぶたや鼻、耳の欠損のほか、頭部、顔面及び頸部といった日常的に露出している部分で外観に醜状が生まれた場合を指す。
 
「顕著醜形」(著しい醜状)と認定される範囲は、頭部ならば直径8センチ以上の瘢痕(組織欠損の治癒後に残る傷痕)、顔面なら直径5センチ以上の瘢痕もしくは長さ8センチ以上の線状痕(線状の傷痕)、あるいは異なる場所にある線状痕の合計が12センチ以上に達する場合、そして直径3センチ以上の組織陥没がある場合。頸部や下あごならば直径8センチ以上の瘢痕となっている。そしてこれらに関する給付基準の付表では、「女性の被保険者で頭部、顔面あるいは頸部に『著しい醜状』と判断される傷痕が残った場合」の障害等級は8で、360日分の給付金を受け取れることになっているのに対し、これが男性ならば等級は10、給付金は220日分とされている。
 
このほど外貌醜状の規定で男女間に違いがあることを疑問視する投書が行政院(内閣)に届き、労働部(日本の厚労省に類似)はこれに対し、「社会生活上、醜状によって受ける妨害は男女で異なる」と公文書で回答した。するとネット上でこの公文書に関する議論が起こり、中には「男性が顔に負うけがは値打ちがない」と驚く声もあった。
 
労働部労働保険司(局)の白麗真司長(局長)はこれに対し、同規定は1979年に追加されたもので当時の時代背景が反映されていると指摘すると共に、顔面などのけがによる「失能給付」に対するこれまでの議論は主に「著しい醜状」の認定基準で、男女間の違いを指摘されたのは初めてだと説明した。白司長は、労働部では従来から、「失能給付」に関する給付基準の付表内容について今年6月下旬に話し合う予定だったと明かし、その際には医学やジェンダーの専門家を招いてこの件も検討する考えを示した。
 
婦女新知基金会の周于萱秘書長(事務局長)は、外貌醜状の「失能給付」基準で男女間に違いがあることは男性を差別しているかのように見えるが、その実質はやはり女性への差別だと指摘している。周秘書長によると、伝統的な価値観の中では、男性の価値は外観ではなく社会的地位や収入によるが、女性は外観で評価されるという考えが普遍的。このため周秘書長は、「労保失能給付」は給付の理由へと回帰すべきだと主張、醜状障害が仕事に影響するかどうか、醜状部分の再建に関する支援が必要かどうかなどで判定すべきであり、性別を以って判断するのは間違いだと訴えた。
 
台湾男性協会の王泓亮秘書長は、外貌醜状に関する「労保失能給付」が男女で異なるのは制定当時の価値観に合わせたからで、今の時代から見れば確かに問題があると述べている。王秘書長によれば、形式的平等を排除するため、権利平等の概念には積極的是正措置を提唱していこうという考えがある。これは先天的な弱者集団を守っていくための特殊な方法で、例えば議会で女性に一定の議員数を保障することなどだという。
 
王秘書長はしかし、こうした権利平等のための積極的な措置の一部は、環境の変化を検証した上で「すでに役目を終えた」と廃止を検討していくべきだとしている。王秘書長は、「昔は女性の外観は職場でいろいろと取りざたされたが今ではどうだろう?」と問いかけ、労働部が制度を調整する際にはこうした点を考慮に加えるよう求めると共に、より重要なことは性別による偏見を打破し、男性と比べて女性の方が外観が障害になりやすい状況を無くすことだと訴えた。
 
 

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