2024/04/28

Taiwan Today

文化・社会

国立台湾博物館鉄道部園区、7日から一般開放

2020/07/06
国立台湾博物館鉄道部園区が7日から一般開放される。日本占領時代に設置された台湾総督府交通局鉄道部の本庁舎とその附属施設を修復したもので、その範囲は現在の台湾北部・台北市の忠孝西路、塔城街、市民大道、延平北路に囲まれた約1.7ヘクタールを占める。写真は本庁舎内部。イギリスのクイーン・アン様式に似たスタイルを取り入れている。(中央社)

国立台湾博物館鉄道部園区がきょう(6日)、開幕式典を行い、7日から一般開放を開始する。日本占領時代に設置された台湾総督府交通局鉄道部の本庁舎とその附属施設を修復したもので、その範囲は現在の台湾北部・台北市の忠孝西路、塔城街、市民大道、延平北路に囲まれた約1.7ヘクタールを占める。

 

同園区は鉄道部庁舎、食堂、八角楼、電気室、工務室、戦時作戦指揮センターの6つの「国定古蹟(=国が指定する有形文化財)」と、台北工場(=車両修理工場)、清の時代の機器局遺跡の2つの「市定古蹟(=市が指定する有形文化財)」を抱える。

 

国立台湾博物館展示企画組の助理研究員(=アシスタント研究員)である林一宏さんは、修士課程1年の学生だった1993年から、中原大学建築学系 (=建築学科。台湾北部・桃園市)の黄俊銘副教授について台湾総督府交通局鉄道部の研究を始めた。その後、調査から修復、それから博物館の形式での運営にこぎつけるまで、国立台湾博物館鉄道部園区の変遷をその目で見てきた。それは林さんの人生の大部分を占めるライフワークでもあった。

 

建築学科出身の林一宏さんは、近代建築史や建築文化財の研究が専門だ。台湾総督府交通局鉄道部の庁舎は、日本の建築家である森山松之助の設計によるもの。森山は台湾総督府(=現在の総統府)、総督官邸(=現在の台北賓館)、台南州庁(=現在の台湾文学館)、台中州庁、台北州庁(=現在の監察院)などの設計に参与している。

 

鉄道部庁舎の建築は木骨れんが造りの「ハーフティンバー」が採用されている。つまり、建築物の1階部分は旧式の赤レンガ造りだが、2階以上は木造になっている。イギリスのクイーン・アン様式に似たスタイルで、かつてイギリスでよく見られた建築様式だ。林一宏さんは「鉄道技術の発祥地であるイギリスの、その建築様式を取り入れた庁舎はイギリスへの敬意を示すものだ」と指摘する。エントランスをくぐると、木造の大きな階段が出迎えてくれる。天井には豪華絢爛な彫刻が施されており、まるで1920年代にタイムスリップしたような錯覚に陥る。

 

建築史を研究する林一宏さんは、屋根を支える枠組みの木材からある発見をした。日本占領時代、この庁舎の建築時に経費不足が発生した。日本政府はこの経費不足を補うため、資材を直接鉄道部に支給することを決めた。支給された材料というのは、当時阿里山で伐採した最高品質のヒノキだった。これらヒノキの木材は100年の歳月を経た現在も損耗が少なく、修復時には簡単なシロアリ対策を施す程度だったという。

 

日本占領時代、鉄道部庁舎といえばごく限られた職員しか出入りすることが許されなかった。多くの職員は足を踏み入れることができず、一般市民が入るなどもってのほかだった。そんな鉄道部庁舎を含む国立台湾博物館鉄道部園区が7日より、十数年に及ぶ修復を経て一般開放される。「入場券さえ購入すれば、鉄道に関する多くの知識を得て、新しい思い出を作ることができるようになった。自分にとってこれは空間の戒厳令解除であり、台湾の有形文化財修復における進歩でもある」と林一宏さんは話している。

 

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