世界保健機関(WHO)と協働作業を行う団体のうち世界で最も重視される国際的なNPOの一つ、国際病院連盟(IHF)がさきごろ「防疫貢献奨」(防疫貢献賞)を選出し、感染症対策で貢献のあった世界の病院103カ所のリストを公表した。IHFは同時に、優れた感染対策の事例に関するレポート「Building the ‘New Normal’: Harnessing transformative practices from the COVID-19 pandemic」も発表。同レポートでは専門のスタッフが、IHF会員が最も手本にすべき感染対策を選ぶと共に、そうした感染対策の研究事例をまとめている。中華民国(台湾)の衛生福利部(日本の厚労省に類似)中央健康保険署が「全民健康保険」(台湾の国民皆保険制度)の医療データのクラウド検索システム(MediCloud)にTOCCによるアラートを組み込んだ戦略は、同レポートの中で全世界の5つの卓越した学習事例の1つに選ばれた。TOCCとは、渡航歴(Travel history)、職業別(Occupation)、接触歴(Contact history)、集団(Cluster)の有無の情報を指す。
中央健康保険署の李伯璋署長によると、今年新型コロナウイルスが全世界に広がる中、同署は「健保医療資訊雲端査詢系統」(健保医療情報クラウド検索システム)の機能を高め、新たに開発したリアルタイムでのアラートシステムを用いて医療機関を受診する人々のTOCCをまとめて把握することで感染のまん延を防ぐことに成功した。李署長は、今回IHFに評価されたことは台湾の医療従事者すべての栄誉であるばかりでなく、台湾がWHOへの参与を目指していく上で非常に大きな貢献実績になるとの見方を示した。
同レポートでは特に、多くの医療ケアシステムは部署や組織を跨いだ情報交換が難しいことで患者の権益が損なわれると指摘。その上で、新型コロナウイルスのパンデミックが起きる中で台湾は革新的な情報統合を行い、出入国データと健保医療情報クラウド検索システムを結合、適切なタイミング、ならびに適切な地点で医療人員にリアルタイムかつ正確な患者情報(渡航歴や職業別など)を提供しており、医療機関が患者を分類して診断する上で極めて大きく貢献したと解説、同時にこうした取り組みが台湾では感染者が少なく、死亡率も低いことの主な原因の一つだとする見方を示した。