中国大陸の海関総署(=税関当局)が19日、「海峡両岸農産品検疫検験合作協議」(台湾海峡両岸農産物検疫検査協力協定)のプラットフォームを通じて台湾に対し、台湾産のシャカトウ(釈迦頭、「バンレイシ」とも)とレンブ(蓮霧)からコナカイガラムシの一種がたびたび見つかったとしてこの2種類の果物の輸入を20日から当面停止すると通知してきた。
行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)はこれに対し、「一方的かつ国際ルールに従わないやり方で両岸間の正常な貿易を阻害するものだ」として、断じて受け入れられないとする立場を厳正に表明した。同委員会では、台湾が輸出する農産物は全て国際ルールと中国大陸の規定を満たして通関していると強調。輸出強化措置もとっており、生産農家はこれに合わせて管理を徹底していると説明した。同委員会ではすでに重大な案件として10億台湾元(約38億8,000万日本円)の経費を準備、全力で関連の対応措置に取り組み農家の権益を保障するとしている。
農業委員会によると、台湾では2020年1月から2021年9月19日までの間にシャカトウを3,220件(2万8,956トン)中国大陸に向けて輸出している。中国大陸側から、規定を満たさないケースについての報告を受けると農業委員会動植物防疫検疫局はただちにその産地をたどり、果樹園でのカイガラムシ発生状況を確認すると共に予防強化と改善を指導。昨年の10月19日からは源流管理と輸出検疫措置を強化し、梱包作業場での検査も9月10日に続いて再強化した。農業委員会では、その結果今年6月28日以降、中国大陸側から検疫検査の不合格通知は届いておらず、これら措置の強化が効果的であることは明らかだと主張。
また、レンブは今年これまでに1,458件(3,710トン)輸出しているが、そのうち中国大陸側の規定を満たさなかったのはわずか6件で、不合格率は0.41%に過ぎない。農業委員会では輸出のための検疫検査を引き続き強化しており、6月28日以降は中国大陸側が不合格とするケースは出ていないなど、措置の強化が有効であることが示されたという。
台湾におけるシャカトウの年間生産量は約5万7,000トン。レンブは約5万トンで、昨年の中国大陸向け輸出はそれぞれ1万3,588トン(年間生産量の23%)と4,792トン(同9.6%)。中国大陸の輸入一時停止措置を受け、農業委員会ではただちに5項目の具体的な措置を実施して農家の権益保障に努めている。5項目の措置とはまず①輸出奨励措置と台湾産フルーツのプロモーションイベントの拡大。香港、シンガポール、カナダ、マレーシアなど既存の市場に向けた輸出量を増やす。目標はシャカトウ5,000トン、レンブ1,000トンの増加。②生産時期の調整。市場での供給量を分散する。③「農遊券」の抽選活動を行い、消費者が「振興五倍券」を利用して国産のシャカトウとレンブを購入し、全国民で農家を支えるよう働きかける。「振興五倍券」とは、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済の回復に向けて消費の拡大を図るため政府が発行するクーポン券のこと。「農遊券」はそれに合わせて農業委員会が抽選で提供する追加の電子クーポン券。農産物の購入やレジャー農園での娯楽などに使用できる。④ネット通販の強化。⑤企業によるまとめ買いのプラットフォームの開設。国内での需要と買い付け量を増やす。
また、行政院農業委員会は「中国大陸側が国際的な貿易ルールに従わないやり方で両岸の正常な貿易メカニズムを破壊している」として、正式なルートで中国大陸側に協議を求める考え。9月30日までに中国の関係当局から前向きな回答が得られない場合はWTO(世界貿易機関)のルールに則ってWTOに紛争解決を要請し(WTO提訴)、様々な国際組織と関連のメカニズムに問題の解決を訴える。農業委員会では、それにより中国が早期に輸入禁止令を取り消すよう促し、台湾における農家の権益を保障するとしている。