記者を経て作家やコラムニストとして活躍していた陳柔縉さんが18日、入院先の病院で亡くなった。57歳だった。陳柔縉さんは15日、新北市(台湾北部)淡水区で自転車に乗っていたところ、後ろからオートバイに追突されて転倒。緊急搬送されたが意識不明の重体で、18日になって息を引き取った。
文化部(日本の文部科学省に類似)は18日に発表したニュースリリースで、李永得部長(大臣)の言葉として、「自分と陳柔縉さんはかつて同じく新聞業界で働いていた。彼女の『総統的親戚』は大変印象に残っている。陳柔縉さんは台湾に根差した、歴史的な深みのある作品を数多く生み出した。創作にかけるエネルギーは大きかった。今回事故で亡くなったことは非常に残念なことで、悔やまれてならない」と伝えた。
陳柔縉さんは、台湾の文学や歴史に長く関心を寄せてきた。日本統治時代の台湾における庶民文化に造詣が深く、奥深いながらわかりやすい文章で、読者たちに近現代の台湾における人々の生活の変遷を伝えてきた。代表作としては『私房政治:25位政治名人的政壇秘聞』、『総統的親戚』、『台湾西洋文明初体験』、『宮前町九十番地(邦題は「国際広報官 張超英 台北・宮前町九十番地を出て」)』、『台湾摩登老広告』、『人人身上都是一個時代(邦題は「日本統治時代の台湾 写真とエピソードで綴る1895~1945」)』などがある。2020年には長編時代小説『大港的女児』も出版するなど、精力的に活動していた。
なお、『台湾西洋文明初体験』、『人人身上都是一個時代』で2度、「金鼎奨(Golden Tripod Awards)」(出版業界を対象とし、優れた出版社、出版関係者、創作者などに贈る賞)を受賞している。