外交部(日本の外務省に相当)は23日夜、国家電影及視聴文化中心(TFAI。新北市新荘区)で「新南向主題音楽劇―『我的媽媽是Eny?』」と題する交流イベントを開催した。外交部の田中光政務次長(=副大臣)がホストを務め、行政院(=内閣)の鄧振中政務委員(=無任所大臣)、労働部(日本の厚生労働省に類似)の王尚志政務次長(=副大臣)、僑務委員会の徐佳青副委員長、内政部移民署(日本の出入国在留管理庁に相当、NIA)の梁国輝副署長、マレーシア出身の羅美玲立法委員(=国会議員)、湯蕙禎立法委員、何志偉立法委員らが出席した。また、アジア諸国の政府代表機関などの関係者、文化部(日本の文部科学省に類似)、衛生福利部(日本の厚生労働省に類似)、国家電影及視聴文化中心、複数のNGO団体、新住民(台湾人との婚姻で台湾にやってきた外国人の総称)の支援団体の代表者らも招きを受けて出席。総勢約150人で『我的媽媽是Eny?』のミュージカル動画を鑑賞し、台湾社会と外国人労働者たちとの関係について考えた。
ミュージカル『我的媽媽是Eny?』は、台湾の劇団「安徒生和莫札特的創意(AMCreative)」が手がけたオリジナル作品で、2017年以降、何度か上演されている。台湾人家庭で介護労働者として働くインドネシア人のEnyと、それを取り巻く人々の様子を描いた物語だ。インドネシア人を介護労働者として迎え入れることが決まったものの、家族の構成員たちは戸惑いを見せる。しかし、当初はEnyに対して疑惑や不信感を持っていた家族も、次第にEnyを受け入れ、思いやり、そして支え合っていく。台湾人と、台湾で働く東南アジア出身者との接触や、深いところでのつながりを描きながら、台湾の三世代世帯が直面しがちな問題についても考える内容となっている。
外交部の田政務次長は冒頭の挨拶で、「台湾社会は広く移民を受け入れてきた。東南アジア地域からの出稼ぎ労働者や留学生、台湾人と結婚した配偶者など、台湾というこの土地で生活する人々が、台湾の文化に多元性を、社会の発展に多様性をもたらし、わが国の経済発展につなげ、ひいては台湾と東南アジア諸国との結びつきを深めてくれている。台湾人のインクルーシブでフレンドリーな性格は、台湾が常々、世界で最もフレンドリーな国の一つに挙げられる要因となっている。台湾は新南向対象国(中華民国政府が掲げる新南向政策の対象国を指す)の人々にとって、働く場であり、学業を修める場であるだけでなく、第二の故郷(home away from home)でもある」と述べた。
駐台北インドネシア経済貿易代表処(IETO。台湾におけるインドネシア大使館に相当)のBudi Santoso代表は、「『看護(介護労働者。住み込みで家事手伝いを行うことも多い)』という仕事は、ただ身を粉にして働くだけでなく、人と人とを結びつけ、助け合うことでもある。このミュージカルでは、インドネシア出身の介護労働者が台湾社会で果たしている特殊な役割が丁寧に描かれており、台湾とインドネシアの人々の相互理解を促進するのに役立つだろう」と期待を寄せた。
中華民国(台湾)政府は2016年より「新南向政策」を掲げ、対象となる18か国(東南アジア諸国、南アジア諸国、オーストラリア、ニュージーランド)と「以人為本(=人をもって本となす)」の理念に基づき、各領域での交流や協力を深めている。外交部は今回、「外国人労働者」という議題をテーマに選び、台湾の優れたミュージカル作品を通して、ソフト且つ独創的な方法で「新南向政策」に関連する物語を多くの人々と共有した。外交部は、「このイベントを通して、台湾の人権擁護、包摂的、多様な価値観といったウォームパワー(warm power。中国のシャープパワーに対抗する概念)を示すと同時に、『人』を起点として台湾と東南アジア諸国の人々の心を改めて結び付けることができた」とイベントの成果を評価している。