写真と映像を専門に展示する文化施設「国家撮影文化センター台北館」(台北市中正区)で今月8日から手話による展示解説のサービスがスタートした。ボランティアガイドの言葉を、聴覚に障害をもつ人たちのために手話通訳士が通訳する。同館では現在、日本統治時代の台湾を記録した写真展「典蔵開巻:日治時期写真帖的台湾」(ベールを脱いだコレクション:日本統治時代からやって来た台湾のアルバム)が開催されている。手話通訳付きで展示を参観した聴覚障害者たちは、展示物の時代背景や物語を知り、いつもとは違う視点や側面から、台湾が持つ豊かな歴史や文化を感じ取っていた。
このサービスは、台湾手語翻訳協会(TASLI)の協力を得て実現した。手話通訳の豊富な経験を持つ魏如君さんと林麗媚さんが、国家撮影文化センターのボランティアガイド、鄭玲玲さんの言葉を手話で通訳するというもの。現在開催されている写真展「典蔵開巻:日治時期写真帖的台湾」は日本統治時代の台湾で撮影された写真を展示するもので、例えば1905年に撮影された貴重且つユニークな台湾における熱帯医学研究の写真から1918年のコレラの大流行、1920年代に行われたアジア最大規模の治水プロジェクト「嘉南大圳」の建設の記録などは、20世紀初頭、衛生や建設分野で近代化に向けて邁進していた台湾の歴史を示すものだ。また、1923年に当時の皇太子であった昭和天皇が台湾で行った12日間の視察を写真で記録した『行啓紀念写真帖』や1930年代に発行された『台湾写真通信』などは、いずれも南国の島嶼ならではの風景を見ることができる。
手話通訳付きの展示解説に参加した人たちの反応は上々だった。聴覚に障害がある一方で視覚からの吸収や感知にとりわけ敏感な彼らは、展示品を観賞するときも全神経を集中させて作品の背後にある物語を読み取ろうとし、1枚1枚の写真から伝わる深い歴史的な感情を感じているようだった。
国家撮影文化センターは現在、参観者にフレンドリーで、かつ誰にでも平等な展示環境を構築するために取り組んでいる。今回は手話通訳によるガイドを通して、写真や映像などの芸術を、特定のグループの人々の生活の中に持ち込んだ。国家撮影文化センターは、参観者の誰もが写真や映像などが伝える文化や芸術の美しさを享受して欲しいと期待を寄せている。